月刊ガソリンスタンドに記事が掲載されました

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   SS業界で読まれている月間ガソリンスタンドに私の記事が掲載されました。1月号です。以下紹介 しておきます。

新たなことを取り入れなくとも収益は必ず向上する
そのためにも、保有する経営資源を見直しアナログ力の強化を

   SS経営の質が問われる素晴らしい時代
 我が社はコンサルティング会社です。どちらかというと、小さな規模の会社とのお付き合いが多かったのですが、この数年、大手の特約店やセルフの方々とも 接する機会が多くなりました。みなさんそれぞれ頑張っていらっしゃいます。しかし、これまでの業界パラダイムに縛られ、方向性を見失っている方がたくさん いらっしゃいます。ほんの少しの気づきをもち、考え方を変化させることで、SSは素晴らしい事業に生まれ変わります。
セルフサービスSS(以下セルフ)が解禁され、「フルサービス(以下フル)対セルフ」という競争構図ができました。その後、セルフが広がるにつれて「セル フ対セルフ」の競争へと移り変わってきました。後発のセルフが思うように販売量を確保できず、撤退に追い込まれるセルフも出てくる中、日本特有の「付加価 値(油外)型セルフ」が出現しました。最近では、小規模付加価値型セルフも登場しています。このようにSSのビジネス形態が多様化しはじめ、日本のSS市 場は、現在、量の時代からビジネスモデル(業態)を構築する質の時代へと転換し始めています。
 SS業界は、経営においてあまりにも「ガソリン(燃料油)」という単一商品にこだわりすぎてきました。ありきたりのことと思われるかもしれませんが、ビ ジネスモデルを構築する質の時代においては、一度単一商品から離れ、小売業・サービス業・接客業としてのあり方を見つめなおすことが大切です。
セルフとフル、それぞれのあり方
 どんな業種でも、顧客のニーズに対応する事業とウォンツを満たす事業があります。ニーズとは生活するために必要な商品であり、ウォンツとは顧客が欲しい 商品です。ガソリンは、なくなったら車が走らなくなるので、仕方がなく購入するニーズ商品です。ニーズ商品は、客単価が低く価格競争に陥りがちになります が、ウォンツ商品は、高付加価値が実現できます。
セルフは、その基本がニーズ対応事業です。ガソリン専売型セルフであれ付加価値型セルフであれ、まずは、このニーズ機能を徹底して高める必要があります。 「価格」「ドライブスルー洗車(以下DT洗車)」「決済機能」「クレンリネス」等がその基本機能となります。これらのニーズに対応した上で、接客技術を磨 き、ウォンツ商品・機能の多様性を取り入れた形態へと発展させていきます。つまり、ニーズを強化しウォンツへと機能を向上させていくこととなります。
 セルフのビジネスモデルの進化に比べてフルの進化が遅れています。実際、経営をサポートしていても、セルフの経営者の方が努力されています。セルフがこ れだけ展開される中、相変わらずセルフと同じニーズ対応事業をしていては、基本機能においてセルフに対して競争劣位にあるフルが勝てる見込みは少ないで しょう。進化が進んでいないフルについて少し述べておきます。
ポイントは、セルフが保有しない経営資源を徹底的に高めていくことです。
 フルが今後まずステップアップする段階は「サービス業」です。サービス業とは、「お客様が自分で出来ないこと、自分で行うことが面倒なことを、高いレベ ルで代わって実施して差し上げる」事業です。お客様が自分で出来ないことですので、実施して差し上げるとウォンツの要素が高くなります。例えば洗車におい ても、お客様が自分で行う洗車やちょっとセルフに来店してできる洗車程度のものを提供していては、サービス業とは言えません。フルには100種類を超える 作業商品メニューが存在します。これらの商品力を見直せば、事業として立派に成立していきますが、配布するメニューさえない状況では、ほとんどのお客様 は、この事実を知りえません。つまり、売れないのではなくお客様が買えない状態にしてしまっています。セルフと比較して、競争優位にある武器を前面に押し 出していません。数ヶ月前、セルフとフルの油外商品の表示・告知調査をしました。圧倒的に、セルフの方が告知率が高い結果でした。余談になりますが、フル は、アイランドがはげていたり、ポスターがすすけていたり、計量機がさびていたりするころがあまりにも多いことも見受けられました。接客業としては許され ないことであり、セルフではほとんどこのようなことは見られません。
 フルがお客様のウォンツを満たしサービス業化していく際に、収益を阻害する最大の要因は給油だと考えています(給油を否定はしていません)。スタッフの 意識があまりにも給油に向けられることから、洗車の仕上げをしていても、給油のお客様が来店したら、洗車仕上げを後にして給油に行ってしまう。油外商品を ご購入いただいたお客様に、その報告をしている際に、給油が気になって仕方がない。このようなニーズ商品を中心にオペレートしている状況では、カーケアの リピートは望むべくもありません。給油はフルにとってディフェンスラインです。ラッシュという最大のビジネスチャンスに、スタッフ全員がディフェンスライ ンにならんでしまっては、油外というオフェンスができなくなります。今後のフルは、ディフェンスラインを極力絞って、オフェンスラインを広げ、ゆっくりと お客様と作業商品というウォンツ商品で応対させていただくフォーメーションづくりが必要です。
 そのための方策はいくつかあるのですが、一例を述べます。例えば店舗です。給油スペースを縮小し、収益性の高い作業商品のスペースを確保することや、店 舗のあらゆる部分を告知活動に使用するスペースマネジメントが必須となります。現在の計量機は優秀で、タワーマルチであれば、300?/月の燃料油販売を 1台で対応できます(壊れたら困るので2台おきますが)。給油スタッフはラッシュ時マックス2人で十分です。あとのスタッフを油外販売というオフェンスに まわすことが出来ます。
 このように、ビジネスモデルを開発する時代になったとはいえ、新たなことを実施するのではなく、今保有している経営資源を最大化するためにひとつひとつ を見直すだけで、十分独自の経営手法が開発されてきます。フルはウォンツ機能を強化して、給油というニーズにも対応する事業に転換していくことが業態開発 のヒントです。いたずらに敷地面積・規模の大小・燃料油販売量にこだわることなく、自店のスタイルに併せた客数と客単価のバランスをとればよいのです。
最大の経営資源「人」
 どんなに外部環境が変化しても、人を育てるということが事業からもれることはないはずです。事業とは付加価値です。その付加価値は、顧客を創造し維持す ることから生まれます。顧客を創造・維持してくれるのはSSで汗を流すスタッフです。スタッフ一人ひとりの気力・笑顔・技術・創造性を開発することがビジ ネスモデルを創造することだと考えます。お客様が楽しそうに買い物に来てスタッフが楽しそうに働けば、その事業に赤字などあるはずがありません。
 私は、心理学の手法を活用したマネジメント改革をよく行います。すでに500人以上の経営者・マネジャー・スタッフに実施しました。そこで、この業界に 共通している事項が「ひとの言うことをよく聞いて、強調して仕事をする風土はあるが、新しいことを発想し、それを整理することを苦手としている。自ら目標 を設定し、チャレンジする傾向が不足している」ことです。キャンペーンなどを行っても、元売や本社から目標が与えられます。SSの運営手法も統一化された ものが提供されてきます。新たな情報収集の機会が少ないため、設定された目標を解決する手段が不足しがちになります。接客や技術の教育はありますが、人間 性を向上させる教育があまり設定されていないため、目標を達成することで人間が成長するステージが職場にみられません。コストを削減することは確かに大切 ですが、人を育て付加価値を向上させる努力を怠ると、せっかく素晴らしい事業であるにもかかわらず、業種としての地位が向上しません。「よく働く」という 長所を生かすために、自らが発想し、自らが設定した目標を、自らの責任で達成していく自立型人間の創造が必要です。
2006年の予想
 SSは流通業の末端ではなく、小売業・サービス業・接客業です。SS事業に従事する方々(私もそうですが)には、お客様との接点である「人」「商品」 「店舗」等の経営資源(アナログ)に徹底的にこだわることを提言します。新たなことを行わなくとも、今ある経営資源にこだわり立ち上げるだけで、十分魅力 的な事業になります。その中で、さまざまなビジネスチャンスが創出され巷で開発されている新たな商品やシステムも活用できるようになるでしょう。業態開発 の競争というこの素晴らしい時代に、SS事業に従事する私たちが、これらのことに着手する年になれば、2006年は素晴らしい年となるでしょう。努力を怠 ると、ガソリンを売っている場所としての評価を消費者から受けるでしょう。未来は与えられるものではなく、自らが創造することだと信じています。
 SSを取り巻く外部環境は益々厳しくなります。人手不足、環境、燃料転換・カーケア市場における競争の激化等、これまで存在しなかった課題も発生してき ます。そのためにも、個性あふれるSSづくりをおこない、ただ黒字を志向するではなく、大きな利益を確保していかなければ将来の課題への対応はできませ ん。SSはこのことが十分に可能な事業であることを認識し、事業を愛し、スタッフを愛し、顧客を愛する事業の基本理念を実現していく2006年にできるよ う、微力ながら力を尽くしていきたいと考えています。

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このページは、宝徳 健が2006年1月 4日 12:34に書いたブログ記事です。

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