日本の暦には、五つの節句があります。季節の変わり目がはっきりしている日本はこの「節」をとても大切にしました。そして、この五つの節句には、神様にお 供えをし、家族そろって節振舞にあずかりました。これが「おせち」の始まりとなり、今はお正月の料理をおせちと呼ぶようになりました。
ちなみに五つの節句は、
1月7日:人日(じんじつ 七草)
3月3日:上巳(じょうし/じょうみ) 桃 ひな祭り
5月5日:端午(たんご) 菖蒲
7月7日:七夕(しちさき/たなばた) 竹・笹
9月9日:重陽(ちょうよう) 菊 です。
おせちは五穀豊穣を願い、家族の安全と健康、子孫繁栄の祈りを込めて、縁起の良い食材の名にこと 寄せ、海の幸、山の幸を豊かに盛り込んだものです。おせちは昔から、五法・五味・五色をバランスよく取り入れて作るのがよいとされていました。 それぞれ の料理のいわれとうんちく
☆紅白かまぼこ
紅はめでたさと喜びを表し、白は神聖を表すのは、日本ばかりか東アジアやインドネシアにも残っている古い習わし。
☆伊達巻
昔の人は、大切な文書は巻物に装丁し、絵は掛軸に仕立て、家宝にしていました。江戸時代、長崎に伝えられたしっぼく料理の中に、「カステラかまぼこ」とい
うものがありました。これが江戸に伝えられ、伊達者たちが着ていたドテラに似ていたことから伊達巻と呼ばれるようになったようです。伊達者とはシャレ者と
いう意味です。
☆錦玉子
黄身と白身の2色が美しい錦玉子は、その2色が金と銀にたとえられ、お正月料理として喜ばれます。2色を錦と語呂合わせしているともいわれます。
☆栗きんとん
黄金色に輝く財宝にたとえて、豊かな1年であるようにという願いが込められています。また、「勝ち栗」という言葉があるように、栗そのものが昔から縁起の
よい食べ物として尊ばれてきました。日本中どこにでもある栗は、山の幸の代表格。砂糖の貴重な時代には、多くの砂糖を使用して調理する栗きんとんは、大変
贅沢な料理でした。
☆黒豆
黒豆を上手に炊き上げることができれば、お嫁さんの及第点といわれたくらい、豆を軟らかく炊き上げるには、技術も経験も必要です。また、植物性タンパク質
が豊富な豆は、肉食の風習がなかった昔では、欠くことのできない食品でした。この黒豆がお正月に登場するわけは、「まめ」が丈夫・健康を意味する言葉だっ
たからです。歌舞伎ことばに「まめに暮らせよ」とか「あなたもまめね」というセリフがよく出てきます。
☆昆布巻
喜ぶの言葉にかけて、昆布はお正月の鏡飾りにも用いられています。日本料理の必需品ともいえる大切なもので、健康長寿が得られるといわれています。
☆田作り
豊作を願い、小魚を田畑に肥料として撒いたことから名づけられた田作り。片口鰯の小魚を天日で干して上げたごまめを砂糖としょうゆで調理したものです。
☆数の子
二親(にしん)から多くの子が出るのを好き事とし、古くからおせちに使われました。今は数の子も高価な品となりましたが、かつて、数の子は日本中どこでも
入手できる一般的なものでした。現在使われているのは塩数の子です。ちなみに、アイヌの言葉で、ニシンのことを「かど」といいます。かどの子供つまり「か
どのこ」がなまって「数の子」になりました。
☆菊花かぶ
かぶは冬が旬。大根とともにジアスターゼに富んだ大変健康に良い食べ物で、昔の人は経験から知っていたようです。これをおめでたい菊の形に飾り切りし、食紅であざやかに染めて、紅白の酢のものに仕立てたのが菊花かぶです。
☆小肌栗漬け
小肌はコノシロという魚の成魚になる前の名前。つまり、出世魚なので縁起が良い食べ物のとされているわけです。小肌粟漬は、小肌の切り身を蒸した粟と一緒
に酢漬けにしたもの。粟はクチナシで鮮やかな黄色に染めています。粟は五穀豊穣を願ったものですが、防腐効果もあるという知恵も隠されています。
☆えび
えびは、長いひげをはやし、腰が曲がるまで長生きすることを願ってお正月飾りやおせちに用いられます。
☆紅白なます
生の魚介などを用いて大根、にんじんと酢で作ったことから、なますの名がつけられました。今は生の魚介の代わりに、干柿や昆布、ゆずの千切りも用いられます。大根の医者いらず、といわれるように紅白のめでたい色合いばかりではなく、ビタミンCも豊富です。
☆ごぼう
細く長く地中にしっかり根を張るごぼうは、お正月料理やお菓子に重要な役割を果たしています。宮中でお正月に配られる花びら餅の芯にも、ごぼうが用いら
れ、大切に扱われているのです。たたきごぼうは、軟らかく煮たごぼうを叩き、身を開いて、開運の縁起をかついだもの。ごぼうの産地である八幡の名をとっ
た、牛肉の八幡巻、穴子の八幡巻もお正月らしい巻もの料理となっています。
自然に根ざし、自然に感謝した日本の文化は素敵ですね。
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