テーバイ王の国王ライラスは、かねより「男児を得るときは、その子が父を殺すだろう」という神託を得ていました。その言葉がために、ライラスは、妻との セックスを避けていました。ところが、ある夜、酒に酔い、妻と交わり、その結果として男児が誕生してしまいました。この子がオイディプスです。
男児の誕生を怖れたライラスは、家臣に命じて幼児をを隣国コリントスの国境に近い、山の中に捨てさせました。でも、家臣は、いたいけない子供を殺すのはしのびなく、山の中で出会った牧人に幼児をゆだねました。
雄々しい若者に成長したオイディプスは、あるとき、「お前は継子(ままこ)だ」といううわさを聞き、不安になって、アポロンの神託を聞きに行きました。
アポロンは、その質問には答えずに、「故郷に帰ってはならない。お前は、父を殺し、母を娶るであろう」と告げました。
オイディプスは「えっ!!! この俺が慈愛あふれる父を殺し、母と交わる? そんな馬鹿な・・・!!!」
でも、アポロンの神託は絶対です。
悩みに悩んだあげく、オイディプスはおのれの宿命を避けるべく、故郷と思っているライラスへ戻る道とは反対のテーバイに行く道を進みました。父母(と思っている人たち)のもとを離れ、放浪の旅に出れば、災難を避けられると考えたのでした。
途中の狭い三叉路で、従者を連れて、馬車に乗った老人に出会いました。
「若僧、そこをどけ」「いや、ご老体、この道に先に足を踏み入れたのは私のほうだ。そっちこそ私が通るまで待つがよかろう」「ほざくな」
狭い道です。どちらかが譲らなければ埒があきません。にっちもさっちもいかなくなって、老人がオイディプスの顔を鞭でうちました。「なにをする!」
オイディプスは、従者を打ちのめして、老人を馬車ごと谷底へ突き落としました。なんと、この老人は、オイディプスの父にして、テーバイの王ライラ
スだったのです。じゃ、じゃ~~ん。神託の通り、オイディプスは父を殺してしまったのです。でも、このときは、まだ、オイディプスは父を殺したことを知り
ません。
このとき、従者がふたり生き残っていました。あとで出てきます。
テーバイに入ったオイディプスは、そこの住民を苦しめていたインテリ怪獣スピンクスと対決します。スピンクスは、顔は人間の女、胴体はライオン、そして、鳥の翼を持ちます。エジプトのスフィンクスと発生は同じものです。
スピンクスは、人々に難問を出して、それに答えなければその人間を食い殺してしまうとう恐ろしい怪獣です。なんか、現代の教育ママゴンみたいですね。
スピンクスはオイディプスに対して「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足、それは何か」と問いかけます。オイディプスは「それは人間。幼いときは、四本足で這い、長じては二本足で歩き、老いては杖をつく」と答えました。
正解を出されたスピンクスは悲観して自殺してしまいます(弱いやっちゃ~)。
住民を悩ませていたスピンクスを退治したオイディプスは、その栄誉により、テーバイの国王となり、王妃イオカステを妻に娶りました。つまり、自分 の母親です(ギリシャ神話では、あまり、年齢にはこだわらないように)。ここでも、神託が実現してしまったのです。やがて、オイディプスとイオカステの間 には、二人の息子と二人の娘が生まれます。
オイディプスが即位してしばらくたつと、テーバイは凶作、悪疫の流行など、惨事が次々と起こります。神にその理由を問うと「先王を殺し、人倫にもとる行為を犯した者がいる。その者を探し出し、国外追放にしなければ、神の怒りは決して静まらない」とお告げがありました。
オイディプスはその調査に入りました。すると、なんと、その人間は自分ではありませんか!!!じゃ、じゃ~ん~。そこに、オイディプスがライラスを殺したときの従者がふたり現れて証言するではありませんか。あ~、もういや。ギリシャ神話最大の悲劇と言われています。
オイディプスはそのことを恥じて、両眼をつぶし、盲人となって、放浪の旅に出ます。やさしい娘、アンティゴネが父の手を引いて。この話はまだまだ続きます。次回ね。面白いでしょう。
ここで、少し心理学講座。
男子が小さい頃、母親にあこがれることを、心理学者フロイトは「エディプス・コンプレックス」と言いました。このエディプスは、オイディプスの英語風の呼び方です。コンプレックスは、人間が自分では意識できない潜在的な心理傾向です。
男の子は、この母親に憧れ父親を敵視しますが、正しく育っていくと、自分が好きな母親が一番愛しているのが父親だと気づき、自分も父親のようになろうとします。
娘が父親に同様の気持ちを抱くものを、エレクトラ・コンプレックスといいます。ギリシャ神話に登場するエレクトラが名前の由来となっています。
その他は、旧約聖書に登場する人物で、ユディットという人がいます。彼女は、力強い男に自分の操を捧げたいと思いながら、いったんそんな男に貞操 を奪われると、その男を憎んで殺してしまいます。若い女性は強い男に操を奪われたいと思いながら、そうした男にある種の憎しみを持っているみたいですが、 そのような矛盾した心理傾向を、ユディット・コンプレックスといいます。
兄弟間の確執は、カイン・コンプレックス。これは、旧約聖書のカインとアベルの物語からきています。
ディアナ・コンプレックス。ギリシャ神話に現れる男装の女神で、女子が自分も力強い男であったならと願う潜在的願望をいいます。女子は、一時期、 男性のおちんちんにあこがれる時期があります。これを、男根期といいます。でも、正常に育つ女子は、その強さを生む力が女性にはあるのだということに気づ いてきます。
あとは、メサイア・コンプレックス。自分が救いの手を差し伸べなければ、周囲の人たちがみんなだめになってしまうのではないかと思ってハラハラする、おせっかいな精神です。
心理学は、いずれ書きましょうね。知っていると面白いですよ。では、次回も楽しみに。
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