盲目になって、国を出たオイディプスですが、旅の途中で亡くなってしまいます。その盲目のオイディプスの手を引いて一緒に旅に出たやさしい娘が、アンチゴーヌです。
ところが、弟のエテオクレスは、交替の時期がきても兄に席を譲らず、兄を国外に追放しました。ポリュネイケスは憤懣やるかたなく、西の国、アルゴスに逃れ、アルゴス王の娘と結ばれました。そしてある日、
「お義父上様、私の祖国では弟が不当に国を治めています。これを征伐しなければ、大儀がたちません。ぜひともお力をお貸しください」と訴え、遠征軍を編成して、テーバイに攻め込みました。
テーバイには七つの城門があり、アルゴスからの遠征軍は、七人の英雄を選んで、それぞれの門を攻略させました。一方、テーバイのほうも、七人の将を選んで防衛しました。
そのひとつの門で、計らずも、ポリュネイケスとエテオクレスの兄弟が対峙しました。ついに兄弟の対決となり、弟は兄の腹を貫き、兄は弟の胸を刺し、ともに血しぶきをあげて絶命しました。
兄弟が死んでしまっては、戦う意味がありません。アルゴス軍は、国に引き上げていきました。
兄弟が死んだので、テーバイの支配者になったのは、オイディプスの弟クレオンです。クレオンは、テーバイの兵士の市外を集めて、手厚く葬らせまし た。でも、アルゴスの方の死者は、甥のポリュネイケスも含めて「けっして葬ってはならぬ。鳥や犬の餌食としろ。この禁をおかす者は死罪だ」と厳命しまし た。
でも、ただひとり、この命令に敢然と背く者がいました。そう、あの心優しい娘、アンティゴネだったのです。アンティゴネは、オイディプスの死後、テーバイに戻り、兄たちの戦いを苦々しい思いでながめていたのです。
アンティゴネは、衛兵の目をぬすんで、兄の死骸に土をかけました。しかし、捕らえられてしまったのです。
クレオンは、捕らえられた者をみて、びっくりしました。最愛の姪だったからです。しかも、アンティゴネは、最愛の息子エモンの許婚でもあります。クレオンは、アンティゴネに厳しい詰問をします。アンティゴネは答えました。
「私は、叔父様の命令は破りました。でも、もっと尊い神々の掟を犯してはおりません。兄弟の愛、使者への敬い、もっと大きな永遠の掟にしたがってまでのことです。罰したいのならどうぞ罰してください。愚かな人は、叔父様、あなたの方です」
クレオンは、王です。メンツがたちません。アンティゴネは地下の墓場に生きたまま埋められてしまいます。
アンティゴネの死を嘆いて、クレオンの息子であり、アンティゴネの許婚である、エモンは自殺しました。そのエモンの死を悲しんで、クレオンの妻も自殺します。クレオンは、神々の罰を受けたのでした。
古事記よりもリアリティですよね。これもまた面白い。次回も楽しみにしてください。
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