1.冥界の王 ハデス
太古の世界がつくられたとき、世界は三つに分けられました。地上の支配はゼウスに、海の支配は、ポセイドンに、地下の支配はハデスにそれぞれゆだねられ
ました。この三人は、兄弟です。これは、古事記にとても似ていますね。イザナギノミコトは、黄泉の国から帰ってきて禊をしたときに産まれた三人の子供に、
それぞれ、昼を天照大神、海をスサノオノミコトに、夜をツクヨミノミコトにゆだねました。三種の神器の鏡は、天照大神、剣がスサノオノミコト、勾玉がツク
ヨミノミコトであることは、すでにのこブログで述べました。
2.ハデスの結婚
ハデスは、地底の国を統治していましたが、嫁さんがほしくなり、ゼウス兄ちゃんに相談しました。ゼウスは「ペルセポネにしなさい。お前の嫁にするのはあ
の娘しかいない。だけど、母親のデメテルが寵愛しているから、おそらく遠い地底の国に娘を嫁がせるのを承知すまい。腕ずくでも奪って、既成事実を作り上げ
なさい」
実はこれには、裏話があります。デメテルという人は、農耕の女神です。そして、なんと、なんと、ペルセポネとうのは、デメテルとゼウスの間に生まれた子供だったのです。つまり、自分の娘をおじさんに嫁がせようとしたのです!!! ゼウス、なんつうやっちゃ~。
まあ、ゼウスの妻、ヘラもゼウスのお姉ちゃんですがね。
3.世界に冬ができた理由
ハデスはそこで早速、実力行使。ペルセポネが花畑で花を摘もうとした瞬間に突然大地が裂け、神馬にまたがったハデスが現れて、黄金づくりの馬車にペルセポネを乗せると、そのまま冥界に帰ってしまいました。
最愛の娘を失ったデメテルは、半狂乱になってしまいました。探し回りますが、どこにも見つかりません。他の神々もゼウスの仕業であることを知っていますから、なにも言いません。
でも、でも、でも、太陽神のヘリオスが、見るに見かねて真相をデメテルに伝えたのでした。じゃ・じゃ・じゃ~ん、さ~あ、たいへん。デメテルの怒 りは生半可のものではありません。農耕の神様の突然のストライキ。地上はたちまち大凶作。これにはゼウスもすっかり困ってしまいました。使者のヘルメスを 地下に送って、ペルセポネをとにかくいったん、デメテルのもとに帰してやるように伝えました。
ハデスはペルセポネに言いました「よかろう。母のもとに帰りなさい。でも、君はもう、地獄の国のザクロを食べたから、完全に地上の人間に戻ること はできないんだよ」。そうして、ペルセポネは、それ以降、一年の三分の二は地上で、三分の一は冥界で暮らすことになりました。里帰りにしては良い条件です ね。デメテルの機嫌はなおりました。でも、娘が冥界で過ごす、一年の三分の一は、悲しみに打ちひしがれ、季節は冬となり、花も咲かずに作物も育たなくなり ました。
4.冥界の地理
タイナロン岬周辺の洞穴から地下にくだり、五つの川を渡ったあたりが、死者の国であるそうです。この川にはそれぞれ名前がついていて、ステュクス川(憎
悪の川)、アケロン川(悲嘆の川)、コキュトス川(号泣の川)、レテ川(忘却の川)、ピュリプレゲトン川(火炎の川)です。
冥府の門には、猛犬ケルベロスがいます。頭が三つ、尾は蛇、首筋に何匹もの蛇がいて、口からは火を吐きます。
地獄の一番奥深いところは、タルタロスと呼ばれています。ここは、主として、神々を冒涜した重罪人が幽閉されていました。
①シシュポス
有名な話ですね。シシュポスは、ゼウスの秘事を暴いたという、あまり明確ではない理由によってここに送られました。刑罰は、山に大きな岩を押し上げ、頂上までくると、その石は転げ落ちて、またそれを押し上げなければいけない。永遠にこの無償の努力を繰り返すのです。
②タンタロス
タンタロスは神々の知恵を試そうと、わが子を殺して、動物の肉だと偽って食べさせようとしたため、地獄につながれました。刑罰は、水中に腰まで埋めら
れ、頭上の果物をとろうとすれば、果物が遠ざかり、足下の水を飲もうとすれば水が引いてしまうというものです。目の前に水や食物をみながら、永遠の飢えと
渇きに苦しまなければならない過酷なものです。
このことから、目の前に欲しいものがあるのに、手に入らない状態のことをタンタロス状態といいます。
③イクシオン
無謀にもゼウスの妻ヘラを犯そうとした罪により、地獄に送られました。車に手足を縛り付けられました。車は永遠の回転運動を続けています。
④オクノス
罪は定かではありませんが、地獄の底で縄をなうことを命じられ、しかし、いくら縄を編んでも、そばにいるメスロバが片っ端から、食べてしまうという罪です。
冥界の解説は、このくらいでいいかな。では、次回の話をお楽しみに。
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