昔あるところに、プロメテウスとエピメテウスという兄弟が暮らしていました。「メテウス」は「考える」という意味です。プロメテウスのプロは「前の」なので、「前もって考える人」、エピメテウスのエピは「後の」なので「後で考える人」です。
本を読むと、よく「プロローグ」「エピローグ」という前書き、あとがきの言葉が出てきますが、「プロ」「エピ」はここからきています。
彼はあるとき、ゼウスの知恵を試そうとして、ひとつのさらに肉と骨を盛り付けどうぞ、お好きなほうをお選びください」と告げました。肉の方には胃袋をかぶせていかにもまずそうに見せかけ、骨の方は逆に脂肉にくるんでいかにもおいしそうにみせかけておきました。
ゼウスはまんまとだまされて、骨の方をとりました。全知全能の神に対して、こんな悪戯をしてただですむはずがありません。
でも、プロメテウスは「前もって考える人」(きっと諸葛亮孔明のような人だったのでしょうね)、だったので、ゼウスに憎まれることを十分に承知し た上でした。プロメテウスは、ゼウスの弱みを握っていたのです。「あまり私に手ひどいことをすると、あなたにもよくないことがありますよ・・・」。こんな ことを言うものだから、ゼウスは気味が悪くてしかたがありません。ゼウスには、ギリシャ神話の誰もがひれ伏すのに、プロメテウスのなんと大胆なことでしょ う。
さらに、プロメテウスは神々の住処から火を盗み出し、人間に与えてしまったのです。神々は、神の優位性を保つために、人間には火を与えないことにしていたのです。
これ以来、人間は、夜は灯りをともすようになり、物を煮炊きして食べるようになりました。道具をつくるために火を用いることも会得しました。さら に、プロメテウスは、家を建てること、気象を観測すること、数を数えること、文字を書くこと、家畜を飼うこと、船を作ることなど、文化・文明を人間に伝え ていきました。
ゼウスを初めとする神々は面白くありません。それで、人間界にパンドラを送り込んで、女・恨み・快楽・悪などを人間界にちりばめたのでした。この話は後日。
ゼウスはプロメテウスを罰したくてしかたがありませんが、何か弱みを握られています。でも、もう、堪忍袋の緒が切れました。権力の神クラトスと暴 力の神ビアに命じて、プロメテウスを捕らえ、黄泉の国に連れて行かせました。プロメテウスは磔(はりつけ)にされ、その腹に杭を突き通され、そこには一羽 の鷲がとまっています。鷲はプロメテウスの肝臓をついばみます。一日かかって食い荒らすと、次の日にはまたプロメテウス中には新しい肝臓が出来、また鷲に 食われる。こうして永遠の責め苦を味わわなければなりません。プロメテウスの刑は三万年です。
でも、しばらくして解放されました。ゼウスは彼を地獄に送る際に、彼が握っている自分の弱みを聞きだそうとしました。地獄に送られるプロメテウスが言うはずがありません。
伝えなかったプロメテウスですが、地獄の責め苦が苦しくてゼウスに伝えました。「あなたに重要な情報を教えるので、私をここから解放してくれ」。ゼウスはこの取引に応じます。
実は・・・・・・。ゼウスはある一人の少女を見初めます。少女の名はテティス。もし、その少女とゼウスが交われば、男児が生まれ、その子は、父ゼウス以上の全知全能の神となり、ゼウスを追い払うというものです。
ゼウスは顔色が変わりました。彼も、天界を支配するときに父クロノスを追い出しているのです。
浮気者のゼウスもこのときだけは、テティスをあきらめました。ゼウスは約束通り、プロメテウスを解放しました。その後、老いたるプロメテウスはゼウスと和解し、晩年はオリンポスの神々の助言者として平穏に暮らしました。ですから、今は地獄にプロメテウスはいません。
さあさあ、次回は、パンドラの箱。これは面白い。私の大好きな話です。いろいろな方面にも波及していきます。次回を楽しみにしてください。
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