マスコミもいけません。彼らには、チェック機能が働かないことから、時として大きな暴力になることがあります。この金融再生プログラム時などは、小さな 弊害はあっても、不良債権を税金で取り除かないとどうしようもなかったことは事実であります。では、講演内容をお楽しみください。
(平成19年1月30日行われた講演内容を宝徳がまとめたものです)
2002年に金融担当相になった。当時金融機関の総資産の中で8.4%が不良債権であった。当時のロンドンエコノミストに「日本の悲しみ」という記事が載った。内容は「もし、日本が不良債権を償却しないのであれば、世界が日本を償却するだろう」であった。
担当相になって、2年半で不良債権を半分にすると目標をたてた。その瞬間に大バッシングがおきた。何をバッシングされたかというと、細かいけれど当たり前の行動計画を積み上げたからバッシングが起きたのであった。
金融再生プログラムには6つの項目があったが、そのひとつが大バッシングを受けた。銀行が発表した不良債権額と金融監督庁が調査した額にあまりにも違いがありすぎた。だから、これを公表してマーケットの判断に任せようといった。
この前に、銀行には公的資金が注入された。その条件として経営改善化計画がつくられたが、これが守られていない。その守られていないことに金融監督庁が何も言わない。改善のガイドラインを30%以上割ったら、改善命令を出せと言った。
そもそも、繰延税金資産の扱いが問題であった。(その年に償却される不良債権の額には限度があるが、手持ちのものをその限度以上に償却すると、そ れは、その期には費用として認められず、その期には、税金を多く払うことになるが、翌期以降は、それを償却できるので、税金が後から戻ってくるという税効 果会計の仕組み:by宝徳)
しかし、これは利益が出ないと帰ってこないの。そのときの銀行は、利益がでる体質ではなかったため、いくら繰延税金資産を計上してもあとから帰ってこないお金になってしまっていた。もってのほかなのは自己資本の半分くらいが繰延税金資産であった。
これを公表したものだから大バッシングを受けた。「竹中は、銀行をつぶす気か!」と言われた。
その瞬間、竹中さんは思ったそうです。「これはいける」と。なぜなら、金融再生プログラムには前述したように6つの項目があったのだが、マスコミ も政府関係者も官僚もみんなそのひとつに目がいって、あとの5つは理解しようとしなかった。なので、繰延税金資産については、1年半ほど時間をかけて議論 をすることにして、あとの5つを進めた。マスコミは、このことを「竹中は、骨抜きになった」と表現した。
現在の不良債権比率は1.9%である。
戦略は細部に宿る。当たり前のことをきちっとやっていくだけだ。
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