1..其の鋭気を避け、其の惰帰(だっき)を撃つ。此れ気を治める者なり。
敵が元気なときは戦いを避け、疲れて帰っているところを攻撃する。これが気を治めるということ。つまり、弱みをつけという意味です。ランチェスター戦略でもそうですね。足下の敵をたたけ。相手の弱いところを自分の強みでやっつけていくことが戦術上大切です。
2.治を以って乱を待ち、静を以って譁を待つ。此れ心を治める者なり。
きちんとして敵が乱れるのを待つ。静かにして、敵が騒ぐのを待つ。これが心を治めるということ。不利な状況に追い込まれても、いつかはチャンスがめぐってきます。その好機を待って、落ち込まないようにしましょう。将棋でもそうです。圧倒的に負けていても、次の一手で、大逆転はよくあることです。
3.近くを以って遠くを待ち、佚(いつ)を以って労を待ち、飽を以って飢を待つ。此れ力を治めるものなり。
戦場の近くにいて遠くから敵がやってくるのを待ち、楽にして敵が疲れるのを待つ。たっぷり食べて敵が植えるのを待つ。これが力を治めるということ。つまり、楽をするためには、いろいろと工夫をしろということです。知恵を働かせることを説いています。
ここから九変編に入ります。
テーマは「将にして九変の利に通じる者は、用兵を知る(臨機応変の大切さを知っている将軍は、戦い方をわきまえている)」
4.将の九変の利に通じる者は、用兵の法を知る。
状況において戦い方を帰る大切さをしっている将軍は戦い方を知っている。
①高いところ(優位)にいる敵には、立ち向かうな
②坂の上(優勢)にある敵とは、戦うな
③わざと逃げている敵は、追いかけるな
④敵が強いときには、攻めかかるな
⑤おとりの敵には、食いつくな
⑥帰っている敵は、その行く手をさえぎるな
⑦敵を包囲したら、逃げ道をあけてやれ
⑧追い詰められた敵は、もう追い詰めるな
⑨危ないところには、とどまるな
5.途も由らざるところあり、軍も撃たざるところあり、城も攻めざるところあり、地も争わざるところあり、君命も受けざるところあり
途でも通らないほうがよい場合がある。敵軍でも攻撃しないほうがよい場合がある。敵の城でも攻めないほうがよい場合がある。土地でも争わないほうがよい場合もある。君主の命令でも、従わないほうがよいばあいがある。つまり、例外もあるよということです。
6.将の九変の利に通じざれば、地形を知るといえども、地の利を得るにあたわず。
臨機応変をしっていなければ、地理に詳しくても地の利は得られない。 基本に忠実なだけではなく、基本を知った上で、自分のオリジナルを作れということです。
7.兵を治めて、九変の術を知らざれば、五利を知るといえども、人の用を得るにあたわず。
軍隊を統率していて、状況に応じてやり方を変える方法を知らなければ、例外を認める柔軟性を持っていても、人材を使いこなせません。経営でも、なんでもかんでも自分でやろうとする幹部がいます。人をうまく使いこなすことが大切です。
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