今回は、経営に役立つ言葉もたくさんあります。日本は戦後、将校教育をしてこなかったので、真のエリート、リーダーが育っていません。まさに、今の日本に必要なことです。
1.近くして静かなる者は、その険を恃むなり。遠くして戦いを挑むは、人の進むを欲するなり。
近づいても落ち着いているのは、有利なところにいるからです。遠ざかると戦いを挑んでくるのは、攻めて欲しいからです。 おとなしい人ほど、あなどってはいけないし、ケンカをふっかけてくる人は、まともに相手をしてもいいことはないので、無視しましょう。
2.辞(ことば)の卑(ひく)くして備えを益す者は、進むなり。辞の強くして進駆する者は、退くなり
裏の裏をかけということです。へりくだった言い方をして、守りを固めているのは、ほんとうは攻めようとしています。なまいきな口の聞き方をして、勢いよく攻めかかろうとしているのは、本当は逃げようとしています。
3.夫(か)の惟(た)だ慮り無くして敵を易(あな)どる者は、必ず人に擒(とら)わる。
謙虚でありなさいということです。何も考えもしないで、敵をあなどるような人間は、必ずまけます。力にまかせて猛進することなく、よく力をあわせて、よく敵情を知って、敵に勝つことが大切です。
4.卒の未だ親附(しんぷ)せずして、これを罰すれば、服さず。服さざれば、用い難し。卒の巳(すで)に親附して、罰の行わざれば、用うべからず。
やさしくしてから、厳しくしろということです。将は、兵士がなついていないのに、厳しくするなら、兵士は従いません。兵士が従わなければ、兵士は使いにくくなります。兵士がなついても兵士に厳しくしないなら、兵士は使えません。経営も同じですね。
5.令の素(もと)に行われる者は、衆とあい得るなり。
やるべきことはふだんからやっておきなさいということです。将がふだんから規則をきちんと守り、兵士をしっかり指導しておけば、将兵が信頼しあえることになります。
ここからは地形編です。テーマは「そもそも地形は兵の助けなり(うまく地形を利用すれば、それだけ有利に戦えます)」 三国志、蜀の諸葛孔明は、地形をうまく活用して、連戦連勝を重ねました。
6.およそ此の六者は、地の道なり。将の任に至りて、察せざるべからざるなり。
自分の立場をわきまえて行動せよということです。地形には、通形、掛形、支形、隘形、険形、遠形の六つがあります。それらは地形のパターンです。将は、それらを熟知する必要があります。
①通形:移動しやすいところなので、敵よりも先に高いところに布陣します。
②掛形:進みやすいけど、退きにくいところです。敵に備えがないとわかってから攻めます
③支形:互いに地の利を得ているところです。敵を誘い出して、出てきたところを攻めます
④隘形:谷になっている狭いところです。先に谷の中を占拠して入り口を塞ぎます
⑤険形:守りやすくて攻められにくいところです。先に陣取って、敵が攻めてくるのを待ちます
⑥遠形:互いの陣地が離れているところです。敵が攻めてこない限り攻めるのはやめましょう。
7.およそ此の六者は、敗の道なり。将の任に至りて、察せざるな。
リーダーシップを強化せよということです。いくら地の利を得ていても、将に指導力がないと、走、弛、陥、崩、乱、北という六つの人災を招くことになります。この六つは敗北をもたらします。将はそれらをわかっていなければなりません。
①走:無謀にも敵と戦うならば、逃げるしかなくなる
②弛:メンバーを放任しすぎるなら、だらしなくなります
③陥:メンバーを管理しすぎるなら、弱くなります
④崩:抜け駆けを許すなら、まとまりがなくなります
⑤乱:メンバーを引き締められないなら、秩序が乱れます
⑥北:敵の実力を見誤るなら、負けてしまいます
リーダーが指導を誤ると、危険に見舞われます。リーダーは常に指導力を高める努力をしましょう。
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