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昨日からの続きです。甘茂(かんぼう)が秦の武王に語ります。
「昔、孔子の弟子の曾子が費にいたときのことです。同姓同名の男が人を殺しました。
それを早合点して曾子の母に知らせた者がいます。「曾参(そうしん:曾子の名前)が人を殺した」。母は、「あの子は人さまを殺すような子ではありません」
と平然として機を織り続けます。しばらくして別の人が知らせにきました。「曾参が人を殺した」。それでも母は、平然と聞き流して機を織り続けました。また
しばらくして知らせた人がありました。「曾参が人を殺しましたぞ」。曾子の母は怖くなって、杼(ひ)を投げ捨てて塀を越えて逃げ出しました。曾子の人格、
母子の信頼、二つの好条件をそなえていても、三度まで疑われれば不安になります。
私は曾子ほどの人格者ではありません。あなたからの信頼も、曾子に対する母の信頼には及びません。そのうえ、私を疑う者は三人にとどまりません。あなた
も、杼を投げ捨ててしまうのではないかと、心配です」
恵王は答えました。
「二人の言うことは聞くまいぞ」
さて、この後どうなったでしょうか。明日書きます。
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