このシリーズは右のカテゴリー「どの本よりわかりやすい南総里見八犬伝」に格納されています。
いよいよ、八犬士が次々と登場します。登場するといっても、ひとりひとりの物語が長いのです。今回から、突然、話が、伏姫と八房から、まったく関係がない内容に飛んでしまいます。ひとりを読み進んで行くうちに、「あ~、なるほど」というのが南総里見八犬伝の面白さです。そして、次も読みたくなる。
では、最初の主人公犬塚信乃(いぬづかしの)の登場です。
いよいよ、八犬士が次々と登場します。登場するといっても、ひとりひとりの物語が長いのです。今回から、突然、話が、伏姫と八房から、まったく関係がない内容に飛んでしまいます。ひとりを読み進んで行くうちに、「あ~、なるほど」というのが南総里見八犬伝の面白さです。そして、次も読みたくなる。
では、最初の主人公犬塚信乃(いぬづかしの)の登場です。
私の母は、都立大塚病院で亡くなりました。平成7年7月10日です。大塚は、室町時代(八犬伝は書かれたのは江戸時代ですが、話は室町時代のものです)は、武蔵国豊島郡(むさしくにとしまごおり)大塚村といいました。
その大塚村の田舎道を十歳ほどの大柄な女の子が子馬ほどの大きな犬に乗って駆けています。村に入ると腕白小僧達が「やあい、男女がきたぞ~。おめえ、○○玉がねえんだろう。わーい。男女の信乃やーい」といっせいにはやしたてます。
そういえば、私たちの子供の頃も、こうやって徒党を組んだ腕白の集団が、ひとりの子供をいじめるという光景がよくありました。お前はどっちだって? もちろんいじめっ子組みだったに決まっているじゃないですか。でも、そこには一定の秩序があり、今のように、無作為に人を殺すなどということはありませんでした。また、あまり度がすぎると、近所のおっちゃんたちから、いじめっ子集団がいやというほど怒られました。社会秩序は法律ではなく、民間で作って行くものですね。
話を戻します。大きな少女は、そんな言葉に耳も貸さずに、大きな屋敷の門の前で犬からひらりと降りました。なるほど、質素ながら少女らしい服装で、髪には櫛をさしていて、ととのった目鼻立ちも優しく美しいけれど、その手足の動かし方はキビキビとしていて、少年という方がふさわしいのです。
屋敷の門から、一人の可愛い少女が出てきて、着いたばかりの少女に声をかけます。「お兄様、信乃お兄様」(??なんじゃい??) 「お兄様、どこへいらしたの?」
信乃は「ああ、ちょっと滝田川へね」と答えました。
すると中から「浜路、表へ出てはいけません」とかん高い中年女の声がしました。浜路と呼ばれた女の子は、名残惜しそうに「信乃お兄様、遊びにきてね」と言って、中に入ってしまいました。
「お父様、お母様、遊んでまいりました」と信乃が押しあけたのは、その屋敷と向かい合っている二間(ふたま)しかないみすぼらしい小屋の扉でした。
その狭い部屋のむしろの上に薄い布団を敷いて病人が寝ており、その枕元には痩せた男が片足を投げ出してすわっています。それが信乃の父親である、犬塚番作です。病気の人間が、母の手束(たつか)でした。
今日は、信乃の話のスタートです。明日は、この番作と手束の馴れ初めの話です。お楽しみに。
その大塚村の田舎道を十歳ほどの大柄な女の子が子馬ほどの大きな犬に乗って駆けています。村に入ると腕白小僧達が「やあい、男女がきたぞ~。おめえ、○○玉がねえんだろう。わーい。男女の信乃やーい」といっせいにはやしたてます。
そういえば、私たちの子供の頃も、こうやって徒党を組んだ腕白の集団が、ひとりの子供をいじめるという光景がよくありました。お前はどっちだって? もちろんいじめっ子組みだったに決まっているじゃないですか。でも、そこには一定の秩序があり、今のように、無作為に人を殺すなどということはありませんでした。また、あまり度がすぎると、近所のおっちゃんたちから、いじめっ子集団がいやというほど怒られました。社会秩序は法律ではなく、民間で作って行くものですね。
話を戻します。大きな少女は、そんな言葉に耳も貸さずに、大きな屋敷の門の前で犬からひらりと降りました。なるほど、質素ながら少女らしい服装で、髪には櫛をさしていて、ととのった目鼻立ちも優しく美しいけれど、その手足の動かし方はキビキビとしていて、少年という方がふさわしいのです。
屋敷の門から、一人の可愛い少女が出てきて、着いたばかりの少女に声をかけます。「お兄様、信乃お兄様」(??なんじゃい??) 「お兄様、どこへいらしたの?」
信乃は「ああ、ちょっと滝田川へね」と答えました。
すると中から「浜路、表へ出てはいけません」とかん高い中年女の声がしました。浜路と呼ばれた女の子は、名残惜しそうに「信乃お兄様、遊びにきてね」と言って、中に入ってしまいました。
「お父様、お母様、遊んでまいりました」と信乃が押しあけたのは、その屋敷と向かい合っている二間(ふたま)しかないみすぼらしい小屋の扉でした。
その狭い部屋のむしろの上に薄い布団を敷いて病人が寝ており、その枕元には痩せた男が片足を投げ出してすわっています。それが信乃の父親である、犬塚番作です。病気の人間が、母の手束(たつか)でした。
今日は、信乃の話のスタートです。明日は、この番作と手束の馴れ初めの話です。お楽しみに。
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