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大石主税の和歌を紹介します。
あふ時は 語りつくすと 思へども 別れとなれば 残る言の葉
なんと美しい歌なのでしょうか。忠臣蔵で吉良邸討ち入りの後、切腹する際に詠んだ辞世の句です。内蔵助は、討ち入りのために、主税を早めに元服させ、そして、妻を離縁します。
討ち入りの前に、内蔵助は、主税を母に会わせるために、離縁した母の実家に主税を向かわせます。そのとき、母は、「あなたは一体何をしに来たのか!」と主税に背を向けます。その晩、母の実家で寝ている主税のところへ、そっと母がきます。主税は、寝ているフリをします。母は、主税の背中に向けて小声で言いました。「主税殿、この冷たい母の仕打ちを許しておくれ。主税殿が私を訪ねてくれたこと、嬉しゅうてたまりませぬ。母はお前様を抱きしめてあげたい。されどお前様は大望のある御身。せめてこの晩だけでも一緒におりまするゆえ。どうか御本懐を・・・」
母は一晩中、うちわで寝ている主税をあおぎます。実は、主税は起きていたのです。涙を必死にこらえて。
昔の女性は本当に偉いですね。日本が素晴らしい国だったのは、昔の素晴らしい日本女性のおかげです。社会の中で「陰」という強く絶対に必要な役割に徹する。だからみんなから尊敬される。昔の家庭は、親父には権威がありましたが、母親には「尊厳」がありました。それは陰に徹する覚悟があったからです。
戦後は、ウーマンリブとか男女平等とかわけのわからないアングロサクソンの考え方を入れて、国がめちゃくちゃになりました。男女同権は結構です。でも、男女の役割は違うのです。男女は平等にはなりえない。こんなことを言うとまた「古い」とか「横暴」とか言われそうですが、だってそうなんですもの。
この和歌は、主税が世を去るときに、母を偲んで詠んだものです。涙があふれます。主税はたしか十四歳だったと記憶しています。
では、拙首です。
いにしへの 人々知ると 恥を知る 今生きている みずからのこと
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