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昔々、支那に楚という国がありました。
昔々、支那に楚という国がありました。
「ふ~、これ以上この国にいても、俺はうだつがあがらないままで終わってしまうな。なんとかいい方法はないものだろうか」
張儀(ちょうぎ)は考えた。楚の国に来てからというもの、貧乏暮らしが続いたいるのだった。いっそ他国にでも行くかということも考えたが、何もしないで去ることにくやしい気持ちもあった。
当時、楚の国では、王様の后と夫人がたいそうな勢力を持っていました。昔の支那では、女性の地位は、后→夫人→世婦(せいふ)・女御(じょぎょ)→昭儀(しょうぎ)→美人の順番となっている。漢の高祖 劉邦に敗れた項羽の妻 虞美人はこの美人にあたる。
ちなみに項羽は四面楚歌で漢軍に包囲され逃げ出すときに、虞を殺している。虞美人が死んだ後埋められた墓に、ひなげしの花が咲いたことから、ひなげしのことを虞美人草と呼んでいる。
話は戻るが、この后と夫人が力を持っていることを張儀は思い出した。張儀は、ひらめいた。「いちかばちか、これにかけてみるか」。張儀は決心し、楚王へ拝謁を願い出た。
「王様は、私を用いられませんので、晋の国に行って何か手柄を立てようと思います」
「よかろう。どこなりと行くとよい」
「王は、何か晋の国から手に入れたいものはありますか?」
「もう宝は十分持っている。晋からなどほしいものは何もない」
「王は、美人がお嫌いなのですか?」
「どういうことじゃ」
「晋の国の女は、みんな天女のように美しいそうですが」
「余は田舎ものゆえ、それほどまでに美しい女ごは見たことがない。美人はわしも好きじゃ。是非、連れてきてほしい」
王は、張儀に金銀を与えた。
「なんということじゃ。そんな美人が来て、王の寵愛を受けようものなら、わらわの地位があぶなくなる」 后も夫人も恐れおののいたのであった。
「どうしたものじゃ」と后は考えた。そうじゃ、張儀の機嫌をとっておこう。
「将軍が晋の国に行くと聞きました。たまたま黄金千斤がありますので、将軍やおそばの方の道中の路銀にしてくださいな。どうかお気をつけて行ってらしてください」
それを聞いた夫人も張儀に五百斤を送った。
ふっふっふ~、うまく行っている。あと一押しだな。私の地位も安泰となろう。帳儀の心は躍った。
「王様、これから出発します。天下は、国々の関所が閉ざされていて、なかなか通ることができません。今度はいつお目にかかれるかわかりません。どうか、お杯を賜りとうございます」
「よかろう」
「この席には他人がいるわけではありません。どうか、王様がお気に入りのご婦人がたをお召しくださって杯をいただくわがままをお許しください」
「それもそうじゃな」
王は后と夫人を呼びました。
「王様、私の罪は万死に値します」
「急に、いったいどうしたのじゃ」
「晋に行って、美人を連れてくるなど。ここにおられるお后さまと、夫人のなんと美しいことか。私は天下をあまねく歩いておりますが、これほどの美しい女性をみたことがありません。私は、王様を欺いたことになります」
「もうよい、余もかねがね、天下にこの二人に及ぶ者はないと思っておったのじゃ。」
后と夫人は胸をなでおろしました。
張儀は、その後、后と夫人の力添えで出世をしていきました。
将を射んとすれば、まず、馬を射よってか。
張儀(ちょうぎ)は考えた。楚の国に来てからというもの、貧乏暮らしが続いたいるのだった。いっそ他国にでも行くかということも考えたが、何もしないで去ることにくやしい気持ちもあった。
当時、楚の国では、王様の后と夫人がたいそうな勢力を持っていました。昔の支那では、女性の地位は、后→夫人→世婦(せいふ)・女御(じょぎょ)→昭儀(しょうぎ)→美人の順番となっている。漢の高祖 劉邦に敗れた項羽の妻 虞美人はこの美人にあたる。
ちなみに項羽は四面楚歌で漢軍に包囲され逃げ出すときに、虞を殺している。虞美人が死んだ後埋められた墓に、ひなげしの花が咲いたことから、ひなげしのことを虞美人草と呼んでいる。
話は戻るが、この后と夫人が力を持っていることを張儀は思い出した。張儀は、ひらめいた。「いちかばちか、これにかけてみるか」。張儀は決心し、楚王へ拝謁を願い出た。
「王様は、私を用いられませんので、晋の国に行って何か手柄を立てようと思います」
「よかろう。どこなりと行くとよい」
「王は、何か晋の国から手に入れたいものはありますか?」
「もう宝は十分持っている。晋からなどほしいものは何もない」
「王は、美人がお嫌いなのですか?」
「どういうことじゃ」
「晋の国の女は、みんな天女のように美しいそうですが」
「余は田舎ものゆえ、それほどまでに美しい女ごは見たことがない。美人はわしも好きじゃ。是非、連れてきてほしい」
王は、張儀に金銀を与えた。
「なんということじゃ。そんな美人が来て、王の寵愛を受けようものなら、わらわの地位があぶなくなる」 后も夫人も恐れおののいたのであった。
「どうしたものじゃ」と后は考えた。そうじゃ、張儀の機嫌をとっておこう。
「将軍が晋の国に行くと聞きました。たまたま黄金千斤がありますので、将軍やおそばの方の道中の路銀にしてくださいな。どうかお気をつけて行ってらしてください」
それを聞いた夫人も張儀に五百斤を送った。
ふっふっふ~、うまく行っている。あと一押しだな。私の地位も安泰となろう。帳儀の心は躍った。
「王様、これから出発します。天下は、国々の関所が閉ざされていて、なかなか通ることができません。今度はいつお目にかかれるかわかりません。どうか、お杯を賜りとうございます」
「よかろう」
「この席には他人がいるわけではありません。どうか、王様がお気に入りのご婦人がたをお召しくださって杯をいただくわがままをお許しください」
「それもそうじゃな」
王は后と夫人を呼びました。
「王様、私の罪は万死に値します」
「急に、いったいどうしたのじゃ」
「晋に行って、美人を連れてくるなど。ここにおられるお后さまと、夫人のなんと美しいことか。私は天下をあまねく歩いておりますが、これほどの美しい女性をみたことがありません。私は、王様を欺いたことになります」
「もうよい、余もかねがね、天下にこの二人に及ぶ者はないと思っておったのじゃ。」
后と夫人は胸をなでおろしました。
張儀は、その後、后と夫人の力添えで出世をしていきました。
将を射んとすれば、まず、馬を射よってか。
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