このシリーズは右のカテゴリー「短編小説」に格納されています。
楚に使いにきた斉の宰相、晏嬰(あんえい)に恥をかかせようと、楚の国の王と家臣が、わざわざ無実の斉の国の人間を引っ張ってきて、斉の国の人間は、泥棒ばかりだと言わんばかりです。さあ、晏嬰は、この難題をどうクリアするのでしょうか? ♪あなたな~ら、どうする~♪
「晏嬰さま、違うのです。私は泥棒などはたらいていません。先ほど、楚の街を歩いていたら、いきなりここまでつれてこられたのです」
男は、晏嬰に目でそのように訴えかけます。
「わかっておる、何も心配することはない。助けてしんぜよう」
晏嬰もまた、目でその男に答えを返します。
楚の人間どもは得意満面です。これで晏嬰に恥をかかせることができるとニヤニヤしています。
楚王は言います。
「晏嬰どの、斉の国の人間には、困ったものですなあ。楚に来て泥棒をするくらいの人間が揃っているのではないか?」
晏嬰は、答えました。
「はて、その男は、私もよく存じている斉の男です。その男は、斉の国ではまじめて、周りのみんなからも慕われておった者です。それが、楚の国に来ると泥棒になるのですなあ。どんなまじめな男も、楚の国に来ると泥棒になってしまう。楚のお国にも困ったものですなあ。はっはっは~」
楚王も、家臣も、顔が青ざめました。男はすぐに釈放され、晏嬰は丁重に扱われたそうな。
外交交渉とは面白いものですね。
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