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ちょっと仕事はひとやすみ。息抜きにブログを書きます。さて、何の話でしょうか~。何回かに分けて書きますね。
「これ、何をしておる、しっかりと案内せんか」
「ご主人様、そうはおっしゃいますが」
道案内の男たちはすっかり恐れおののいて、ものの役にも立たない。
「え~い、情けない奴らじゃ。こうなれば我等だけで参ろうぞ」
「かしこまりました」
大将らしき男が、力強い声をかけると、五人の部下たちは、負けないぐらい力強い返事を返した。総勢六名。どの男たちからもほとばしるような力強さが感じられた。男たちは突き立った峰をよじ登り、深い谷に迷いながら進んでいった。
「うん? 殿、あれはなんでございましょう?」
六人がよくみると、小さな岩穴に身を寄せ合っている三人の老人がいた。驚いている一行に、老人たちは今までの数奇な身の上話を打ち明けた。
ひとりの老人は津の国(三重県)からの者、ひとりは紀伊の国(和歌山県)、最後の一人は、音無の里(熊野)から来ていた。
「なぜ、そなたたちのような老人が、このような辺鄙な山奥にいるのじゃ?」
主人と思しき男が三人の老人に聞いた。
老人たちは答え始めた。
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主人とおぼしき者の名前は源頼光(みなもとのよりみつ)である。清和源氏の三代目という由緒正しい武家の棟梁である。その頼光が、時の帝から勅命を受けた。
「京の都に夜な夜な出没し、女性(にょしょう)や童(わらべ)をさらっていく大江山の鬼を退治せよ。今回は中納言の姫がさらわれた」
というものであった。頼光は、四天王と呼ばれる配下に、もう一人剛の者を加えた六人で丹波国を目指した。
丹波の国に出かける前に、自分を含めた六人を三つに分け、自分ともう一人は、岩清水八幡宮に、もうひとつのグループは難波の住吉明神へ、そして、もうひとグループは熊野権現で必勝の参拝をすませたのであった。
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「もし、お武家様。どうかなさいましたか?」
出陣前のことを思い出している頼光に老人たちが尋ねた。
「いや、すまんすまん。ちと、考え事をしていたものでな。それで、そちたちも、妻子をここの鬼にさらわれたというのか」
「そうでございます。鬼の名前は酒呑童子(しゅてんどうじ)でございます。妻子は、もう殺されてございます。なんとか仇を討ちたいのですが、この年ではもう鬼にはかないません。お武家様がた、どうか私たちの無念を晴らしてくださいませ」
「よかろう」
六人の武士は胸をたたいた。
♪むかし丹羽の大江山
鬼ども多くこもりいて
都に出ては人を食い
金や宝を盗み行く♪
(つづく)
さてと、仕事しよっと。
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