どの本よりわかりやすい民事信託

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 さて、簡単な民事信託の枠組みを述べてまいりましたので、ここらでひとつ事例をみましょう。企業承継に民事信託を活用してみましょう。

 個人事業X商店を営むAさんは、長男Bに店を引き継ぎたいと考えていますが、長男はまだ大学生で、すぐにはXを継がせることができません。

 そこでBが大学を卒業、修行を経て経営者として成長するまで、一定期間、誰かにX商店の経営を任せたいと考えています。しかし、従業員を一時的にX商店の事業主とすれば、Bへの承継に際して、軋轢が生じ、派閥争いにも発展しかねません。そこで事業信託を活用して、経営承継の円滑化を図れないかという相談がありました。

【事業信託を活用した経営承継】

①業界にも精通し、経営者としての技量もある外部の人間YをBが成長するまでの経営者としてきてもらいます。このように一時的に経営者に来る人間をSUM(セットアップマネジャー)といいます。一方、経営の建て直しのために一時的に経営者もしくは幹部として入る人間をTAM(ターンアラウンドマネジャー)といいます。SUMもTAMも私が所属するCRC(企業再生・承継コンサルタント協同組合)が請け負っています。

②Aは、X商店の経営について、Yと信託契約を結びます。

③AはYから受益権を取得し、信託は限定責任信託とします。限定責任信託については近いうちに説明します。あまりYの権限と責任が大きくならない信託とご理解ください。

④信託契約に基づく財産の信託及び事業に付随する債務の引き受けにより、実質的な「事業信託」を設定します。

⑤委託者Yは、X商店の経営に係わる事務を執り行い、当該事業によって生じた収益から報酬を収受します。

⑥残余の収益は委託者であり受益者であるAに分配されます。

⑦委託者Aは、信託終了時に信託財産の交付を受けることが出来る受益権を、後継者Bに譲渡します。

⑧受益権の譲渡は、信託契約の締結後かつ信託終了時まで行います。

⑨信託終了により、受託者Yは、信託財産を後継者Bに交付し、信託に帰属していた債務を引き受けさせます。

⑩この結果、BはX商店の経営を承継します。

⑪信託契約は、一定期間または一定の自由の発生(例えば、X商店の運営を継続する体制が整った段階など)により終了すると決めておきます。また、Bに対して、受益権を譲渡させるのではなく、委託者Aが受益権を有したまま、X商店の経営承継が整った段階で、信託を終了させることも可能です。

 また、社内の人間でも軋轢が排除できるのであれば、この方法は有効です。

【メリット】

①関係者からの倒産リスクを回避できます。Yがもし会社を経営している等で倒産しても、信託には影響を及ぼしません。

②委託者が死亡しても経営承継が可能です。

 後継者難に悩む経営者には有効な方法です。

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このページは、宝徳 健が2011年4月10日 13:39に書いたブログ記事です。

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