このシリーズは右のカテゴリー「短編小説」に格納されています。三回目です。
健は、さらに不可解なこの建築基準法の改正を調べた。
「なぜ、建築基準法はの基本的なルールを「仕様規定」から「性能規定」に変更したのだろうか。それも、「必要最低限」のレベルにとどめ、しかも「海外の基準や国際規格」と整合させたなんて。阪神・淡路大震災をきっかけとする建物基準の安全性の強化よりも、むしろ、「国際調和への配慮」を重視したのはなぜなんだ」
日本の「仕様規定」は、古くから伝わる大工さんたちの優れた匠の技に支えられた高度なものであった。それを、建築方法の異なる外国の基準を採用することは考えにくかった。ツーバイフォーという素人でもできる工法と日本のすぐれた技術とは明らかに違う。建物の建て方そのものを変えてしまうことになる。言い換えれば日本の匠の技術を不要にして、外国の工法や建材が日本になだれ込んでくることを意味していた。
地震の多い日本の建築基準は、海外の基準や国際規格よりもかなり厳しくなっている。なのに、海外の基準に「必要最低限」合わせるとはいったいどういうことなのだろうか。阪神・淡路大震災への対応が今回の建築基準法改正ではなかったのだ。
阪神・淡路大震災は、うまく改定の口実にされただけだったのであった。
健は、事実に迫りつつあった。
「そうか、そういうことだったのか。これは日本破壊プログラムだったのか」(つづく)
コメントする