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2011年版中小企業白書の第1部第1章第1節 2010年の日本経済の動向の続きです。輸出や為替についてみてみましょう。
☆輸出
2010年の輸出はリーマン・ショック後の景気回復を牽引してきたました。財務省の「貿易統計」によれば、前年同月比で2009年2月に底を打った輸出は、その後、アジア向けを中心に持ち直しの動きが見られましたが、2010年夏には、前年同月比で伸び率の縮小が続くなど弱い動きになりました。年末に一度回復傾向にのったのですが、東北大震災で、2011年3月には、16ヶ月ぶりに前年同月比で減少に転じました。
☆為替
2010年度の為替相場は、急激に円高が進行しました。2010年4月初旬に1ドル93年前後であった為替レートは、2010年8月下旬には1ドル85円を割り込み、その後も多少の増減を繰り返しながら、円高傾向は続き、2010年11月1比に瞬間値で1ドル80円21銭をつけました(1973年に日本が実質的に変動為替相場制に移行して以降の最高値:79円75銭につぐ円高。その後は83円前後で推移)。
東日本大震災後の3月17日には1ドル76円25銭で最高値を記録しました。
1995年の円高局面は、バブル崩壊後の日本の経常黒字の拡大、アメリカ経済の後退による円高
基調が続く中、1994年末にメキシコ通貨危機が発生し、ドルへの信認が低下したことが背景にありました。それに比べて、今回の円高局面は、
①リーマン・ショック後の世界的な景気後退の中で、国際金融市場でリスク回避的な傾向が強まり、逃避通貨としての円が選好されるようになったこと
②欧州財政危機の発生によるユーロへの信認の低下からその傾向が更に強まったこと
が背景にありました。
さらに、白書では
③震災後、内外の投資家が米国資産を円に換える換金売りの増加が予想されたこと
④中東の混乱の鎮静の兆しが見えないこと
など、リスク回避姿勢が強まったことにより、戦後最高値が更新されたとしています。
では、次回は、その円高が日本経済に与えた影響を見ていきます。
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