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みなさんに、クロネコヤマトの素晴らしいBCPを紹介しましょう。11年間にわたって、10回以上改定しつづけたBCPが東日本大震災で、素晴らしく機能しました。
くり返し申し上げます。起きるか起きないかそんなことの準備よりも今の目の前の課題が大切だとおっしゃる方がたくさんいます。リスクとは常に潜在的なものです。その潜在的なものが顕在化されたときは、もう手遅れなのです。
あなたが今「目の前の緊急課題」というのも、潜在化していたリスクが顕在化したにすぎません。それが対応できるレベル者もであればいいのですが、そうでなければ経営基盤がゆらぎます。また、対応できるレベルのものであっても、その対応している時間が機会費用として経営に打撃を与えます。
リスクマネジメントは経営戦略そのものであることを経営者自身が理解することが最も大切です。
では、はじめます。日経情報ストラテジーの記事を加工して掲載します。
3月17日午後6時20分頃、神奈川県愛川町にあるヤマト運輸の中間物流拠点「厚木ベース」への電力供給が途絶えた。福島第一原発の事故などを受けて、東京電力が3月14日から実施していた計画停電の対象地域となったのだ。
この時間帯は荷物の仕分け作業がピークを迎える。このため電力供給が滞ってしまうと、作業の大幅な遅延を招きかねない。大規模な遅配が起きれば、顧客か らの信用を失う。仮に自家発電装置を用意したとしても十分ではなく、複数ある作業ラインのうちの1つを動かせるかどうかの電力を確保するのが精いっぱい だ。
計画停電という「想定外」の事態に直面したヤマトだが、BCPという備えを最大限に生かすことで「顧客への影響を未然に防いだ」(筧清隆品質向上推進部長:4月16日よりヤマトフィナンシャル執行役員東京統括支店長/写真1)。 特定のベースが機能しない状況に陥っても、近隣のベースで仕分け作業を継続できる仕組みを整えていたからだ。実際、厚木ベースへの電力供給が再開した午後 9時20分までの約3時間、厚木ベースに持ち込む予定だった荷物を、同じ時間帯に計画停電の対象から外れていた西東京や静岡、神奈川など4カ所のベースに 振り分けた。
計画停電の影響は仕分け作業だけにとどまらない。厚木ベースは同じ建屋内に、集荷依頼など顧客からの問い合わせを受け付けるコールセンターを備える。計画停電で電力供給が途絶え、このコールセンターも機能しなくなった。
ベースの場合と同様、コールセンターでも事前の備えが功を奏した。問い合わせの電話を別のコールセンターに振り分ける「受電分散」の仕組みを使ったの だ。これによって、「停電による影響などを心配したお客様から、12月のピークに匹敵する件数の問い合わせがあったが、十分に対応できた」(筧部長)。
なぜヤマトは事業継続の要であるベースやコールセンターが機能を失うリスクを想定して準備を進めていたのか。背景には、2009年に新型インフルエンザの爆発的大流行(パンデミック)というリスクが顕在化したことなどがあった。 つづく
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