昨日は、施策毎の予算額を紹介しました。この予算額というのは、とても大切で、経済産業省が中小企業に対して何を求めているかが反映されています。そして、この予算額を確保するために、経済産業省(中小企業庁)がロジックを作成するのが、「中小企業白書」です。ですから、私たち中小企業診断士というのは、白書を読み込む必要があるのです。中小零細企業のビジネスモデルづくりに、施策を活用するために。
さて、予算額が一番高かった、戦略的基盤技術高度化支援事業を紹介します。
当時、金型製作事業は職人技によって成り立っていました。後発の近畿精工が同様の人的資源を確保するのは困難でした。そこで、コンピュータによる設 計とNCプログラム作成を取り入れて、導入済のNC工作機械の有効活用を図っていく方針をとりました。これは、後発のハンデを乗り越えて、自社の強みを活 かすためです。平成4年(1992年)に「U-Graph」を導入し、3次元CADによる設計を開始し、平成9年(1997年)にソリッドモデルによる設 計体制に全面移行しました。
平成12年(2000年)頃には大手企業でも3次元CADによるソリッドモデル設計が普及し始め、大手企業との取引が増え始めました。2001年には携帯電話筐体の金型製作の受注が本格化し、事業の中核となっています。2004年には、滋賀県より経営革新計画の認定を受け、さらに2006年には中小ものづくり高度化法に基づく特定研究開発等計画の認定を受けました。近畿精工は、経営革新と技術開発を通じて新たな事業展開を模索するとともに、金型作りの変革に取り組んでいます。
社員数が30名弱の会社がこんなにがんばっています。日本の中小企業は素敵ですね。
さて、この会社、取引先からミクロン単位の精度を要求される3次元微細形状をもった成形品の製作について相談を受けましたが、技術的にハードルが高くて、対応ができませんでした。射出成形品の製造を営む地元企業と組んで検討しましたが、技術開発に伴う多額のコストも見込まれ、断念せざるをえない状況でした。当社は、中小企業新事業活動促進法の中の経営革新支援計画を申請し、まずは融資を受けやすくします。そして、さらに、同計画認定に基づく支援事業である戦略的基盤技術高度化支援事業に応募しました。
戦略的基盤技術高度化支援事業とは、どんなものか。
燃料電池やロボットなどの先端的産業をはじめ、わが国経済をけん引していく製造業の国際競争力の強化および新産業の創出に不可欠なものづくり基盤技 術の高度化に向けて、中小企業、ユーザー企業、研究機関等からなる共同研究体によって実施される研究開発から試作段階までの取組みを支援するものです。その委託金額と委託期間は、
1テーマ4500万円以下、委託期間2~3年です。
当社は、国からの研究委託を受けるため、企業のみではなく大学、公的 研究機関や国との委託契約を交わし、プロジェクト管理を一手に引き受ける事業管理者からなる共同研究体(コンソーシアム)を組織していきます。
結果として、技術開発に必要な設備(リニアモータ駆動マシニングセンター、3次元測定器、マイクロスコープ)の貸与を受けることができ、研究開発の資金も確保することができました。この支援によって、リスクが高い技術開発に取り組むことができました。
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