2011年1月28日に書いた記事です。
魏の王様が、楚の王様に、それはそれはきれいな女を贈りました。
「お后さま、たいへんでございます。お聞きになられましたか?」
「騒々しい、いったいどうしたと言うのじゃ」
「何をのんきなことを。魏から王様に、とんでもない美人が贈られてきたそうです。お后さまもうかうかしておられませんぞ」
「まあまあ」
后は、その美人と王の前で会いました。息を呑むような美人です。お后は内心焦りましたが、表情には出しませんでした。
「そなたは、楚のことは何も存じないであろう。わからないことがあれば、わらわになんなりと聞くがよいぞ。そうじゃ、それほど美しいそなたじゃ。家具や装飾品や衣服などもそれなりのものを揃えないとのお。これこれ、すぐに、商人を呼ぶのじゃ」
后は、手下に命じて、一流の品揃えをする商人を呼ばせました。
「さあさあ、こちらにおいで。わらわが選んでしんぜよう。ほれ、これはどうじゃ。ほら、これもそなたによくにあうぞ。何を遠慮しておる。実の姉と思うて、もっとお甘えてよいのじゃ」
「お后さま、私のような他国のものにそのように親切にしていただいて、御礼の言葉もございません」
「よいのじゃ、よいのじゃ。これから仲良くしようぞ」
后のその姿をみた王は、すっかり感心しました。后こそ、親に仕える孝であり、君に仕える臣の鏡であると重臣たちに言いました。
王は、安心して、毎夜、美人としとどに濡れながら官能の夜を過ごしました。
后は、王が安心しているのを見て、美人に言いました。
「王はたいそうそなたのことを気に入っているようじゃ。そなたは美しいからのう。ただ、ひとつだけ、そなたの鼻がおきらいのようじゃ。王におめにかかるときは、必ずその鼻をおおうようにしなさい」
すっかり后を信じ込んでいる美人は、言いつけを守りました。
ある日、王が后に言いました。
「いったい、あの女は、私に目通りするとき、なぜ、自分の鼻をおおっておるのじゃろう。親しくしておるそなたなら何かわかるのではないか?」
「はい。でも・・・」
「よいから申せ」
「はい。それは王の臭いをかぐのがいやだからだそうです。」
「何を!!! すぐに女を召しだせ!!! 鼻切りの刑に処せ!」
后は心の中でニヤッと笑いました。「わらわというものがありながら、あのような女に。わらわがどれほど、毎夜、王に抱かれたいと思ったことか。じゃが、王を敵にしてはならぬ。まあ、うまくいったわい」
さてさて、みなさん。「之を敗(やぶ)らんと欲せば、必ずしばらくこれを輔(たす)けよ」と支那では昔から言い伝えられています。真っ向からぶつかるのではなく、こういう勝ち方もある・・・。支那人は恐ろしい。支那とやりあうには支那人の思考も知らなくてはなりません。
でも、げに女は恐ろしい。
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