源氏物語を読みぬくのはなかなか大変なことです。登場人物が多く頭が混乱してきます。でも、我が國に生まれたからには、この素晴らしい文学を読む必要があります。
今日は、物語の特徴です。
時代背景は、『源氏物語』の成立時より数十年さかのぼった 延喜・天暦あたりの時代に設定されているともいわれ、一種の時代小説的な性格を持っています。しかし、もちろん歴史的事実を踏まえるとはいえ、『源氏物語』はあくまで独自なフィクションの世界です。また、当時の物語に好まれたストーリー展開の方法などを、『竹取物語』や『伊勢物語』など、すでに知 られていた物語から、多く学んでいると思われます。
作中には七百九十五 首の和歌が含まれ、地の文に古歌の一節を引用する「引歌(ひきうた)」の技法 が用いられています。作中人物の対話や心中の思いなどを、巧みな表現で描い ており、人の内面を掘り下げたものとなっています。
一般に、全五十四帖を三部に分けます。
【第一部】
「桐壺(きりつぼ)」~「藤裏葉(ふじのうらば)」(三十三帖)
光源氏の栄華への軌跡の物語
【第二部】
「若菜(わかな)上」~「幻(まぼろし)」(八帖)
光源氏の晩年の憂愁の物語
【第三部】
「 匂宮(におうのみや)」~「夢浮橋(ゆめのうきはし)」(十三帖)
光源氏次世代の、薫(かおる)や 匂宮(におうのみや)の物語
特に最後の十帖(「橋姫(はしひめ)」~「夢浮橋」)を「宇治十帖」と言います。
では、今日は、第一部のあらすじを。
桐壺の更衣(きりつぼのこうい)は、桐壺帝に身分不相応に寵愛され、第二皇子まで産んだため、右大臣の娘で第一皇子の母である弘徽殿の女御(こきでんのにょうご)らに妬まれて病死しまし た。桐壺帝は、この優れた美質を持つ、後見のない第二皇子の将来を心配し、 「源」の姓を与えて臣下としました。 「光源氏」です。光源氏は、左大臣の娘葵(あおい)の上との政略的な結婚に心馴染めず、亡き母によく似た桐壺帝の寵妃の藤壺(ふじつぼ)の宮に憧れます。やがて二人は密通し男の子が産まれま すが、この密通の事実は隠され、不義の子は桐壺帝の第十皇子となり、のちに帝位につきます。こうして帝の実父となった光源氏は、結果的に、いったん遠 ざけられた天皇の位に、常識を越えた方法で近づくことになります。
光源氏は藤壺への満たされない恋を埋め合わせるかのように、その姪にあたる紫の上をはじめ、空蝉(うつせみ)・夕顔(ゆうがお)・末摘花
(すえつむはな)・六条(ろくじょう)の御息所(みやすどころ)・朧
月夜(おぼろづきよ)・花散里(はなちるさと)などの女たちと、恋を重ねます。
これらの恋は、時には光源氏の運命を大きく左右しました。とりわけ、弘徽殿の女御腹の第一皇子が即位して朱雀(すざく)帝となった時代には、光源氏は
須磨・明石に身を潜める不遇な一時期を過ごします。やがて都に帰った光源氏
は、不義の子が冷泉(れいぜい)帝として即位したため、権勢家となり、関わった女たちを「六条院(ろくじょういん)」と呼ばれる壮大な邸に集めて暮ら
します。明石の地で得た娘、明石の姫君は東宮(とうぐう)に入内(じゅだい)し、
光源氏は天皇を退位した人に匹敵する処遇である「准太上(じゅんだいじょ
う)天皇」の位を受け、栄華をきわめました。
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