さすが葛西さん１（皇紀二千六百七十三年六月三十日の日誌）

　「日本人の国際的な存在感が薄くなっている。グローバルに通じる人材の養成が急務だ」という危機感を最近よく耳にします。例えば「国際会議の場で日本人は寡黙すぎるが。何はともあれ発言することが肝要だ。英語の聞き取りと会話能力を養うために、小学校から英語を教え、大学入試にはＴＯＥＦＬのスコアを条件づけるべきだ」などと議論は展開していく。これは、上滑りした議論だと思う。

英語の発言も中身が大事

　世界中どこでも、自信のない発言、整理されていない発言、結論のない発言をするぐらいなら、沈黙している方が遥かに評価される。重要なのは発言を裏付ける「人間力」であり、英語の上手下手ではない。小学校から英語を学ぶのは良いが、教えるのは耳慣らしで十分である。ネイティブな英語教員を雇い、英語の歌を聞かせ、歌わせるのが最適だろう。

　「人間力」は大掴みにいえば「人間学」と「実学」で構成される。「実学」とは高等教育から始めれば十分間に合う。高等学校までは「人間学」の基礎を徹底的に身に付けさせるべきであり、その間に身に付けた基礎力が一生を決する。鉄は熱いうちに打たなければならない。「人間学」はさらに「対人能力」と「基礎知識」から成るが、教室で教えられることは限られており、あとは自発的生活行動の中での体得に委ねられる。

　では、教室で教えるべき「対人能力」とは何か？　まず、自己の確立である。日本人であることの自覚、日本の歴史・伝統・文化に対する誇りを教え、自己を確立して初めて社会の一員となる。目上の者への礼節、共同体の一員としての規律、謙譲心、相互の思いやりは社会の一員として備えなければならない人間関係の基礎である。ここまでは教室で教え、あとは各人が教室で教わった基礎力を土台に家庭、友人、地域社会人としての生活を通じて体得し成長するというのが従来のやり方であった。つづく

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