百人一首 十四

| コメント(0) | トラックバック(0)
 今日は、光源氏のモデルになったと云われている人物の歌です。

陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰(たれ)故に 乱れ初(そ)めしに われならなくに
 「しのぶもぢずり」とは、「信夫もぢずり」です。陸奥の特産品です。乱れ模様に染めたものです。京から遠く離れた陸奥は、宮小人のあこがれの対象でした。

 信夫もぢずりを引用したのは、たとえです。恋に心乱れるさまを「忍ぶ」に掛けています。また染物であることから、「染め」は「初め」に掛かっています。すばらしい。かつての我が國國民は、こんなに教養がありました。こういう教養がないと、平安時代ではもてなかったのですね。

 この歌の作者は、河原左大臣(かわらのさだいじん)です。本名は源融(みなもとのとおる)です。嵯峨天皇を父にもちますが、源氏の姓を与えられて皇族からはずされました。当然、皇位継承権はありません。しかし、多くの重責を歴任したのち、左大臣になり位人臣を極めました。

 ねっ、ねっ、光源氏そのものでしょう?

 この人が京の鴨川のほとりに建築したのが「河原院(かわらのいん)」という大豪邸です。だから河原左大臣と云われています。

 我が國では、右大臣より左大臣の方が偉いのです。他國では、左よりも右が尊ばれます。我が國は、右よりも左が尊ばれます。伊邪那岐命が、伊邪那美命がいる黄泉の國から帰ってきたとき、禊をします。最初に左眼を洗います。その時お生まれになったのが、天照大御神です。次に右眼を洗います。月読命が生まれます。最後に鼻を洗ったときに、素戔嗚尊が生まれます。

 左が最初です。平和を愛する我が國は、力が強い右よりも、右を支える左を尊重するのです。神話とは民族の遺言です。古事記を読まない國民は、國籍だけ日本人です。

 歌の意味です。「陸奥の染物『信夫もぢずり』の乱れ模様のように、私の心も乱れ始めました。誰のせい? 私ではない、あなたのせいですよ」

 いいですね~。若い時、もっと古典を學べばよかった。そして、こういうラブレターを送り、こういうことに反応する女性と結ばれる・・・。おっと、今がどうとか云っているわけではありませんよ(笑)。

 ITに夢中になったり、歌謡曲に一喜一憂するよりも、「人間として」こちらの方が素敵ですよね。

 「情緒」。大好きな言葉です。

失ひし 本来のこと 生きること 真実のこと 共ということ

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.soepark.jp/mot/mt/mt-tb.cgi/5172

コメントする

月別 アーカイブ

Powered by Movable Type 4.261

このブログ記事について

このページは、宝徳 健が2014年1月31日 08:05に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「鶏始乳」です。

次のブログ記事は「アメモネ 2」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。