百人壱首 弐十四

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このたびは 幣(ぬき)もとりへず 手向山(たむけやま) 紅葉(もみぢ)の錦 神のまにまに

 作者は菅家(かんけ)となっています。
 菅原道真公のことです。
 
 宇多天皇のお供をして、奈良へ旅をした際の歌です。「この度」と「この旅」の掛詞になっています。

 当時の旅人は、路傍の道祖神の前で「幣」と呼ばれる細かい紙片や布片をまきちらして、神に捧げ、道中の無事を祈りました。その幣を事前に用意できなかったので、山の紅葉で代用しようと詠んでいます。

 でも、これは抜群のテクニックなのです。幣を忘れたのではなく、用意してきた幣よりも道中の紅葉の方がはるかに美しいことから、紅葉を備えた方が神様が喜ぶのではないかというのを、表現を少し変えているのです。素晴らしい。

 道真公は天下の秀才でした。宇多天皇に愛され、右大臣にまで昇進しますが、ライバルの左大臣(我が國では左大臣が最高の位) 藤原時平の策略によって失脚し、失意のうちに大宰府に流されます。その後、京の都では、地震や雷などの天才が続発しました。みんな道真のたたりと畏れ、怨霊を鎮めるために彼を神として祀ったのが天満宮です。天神さまですね。

東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ

 私が子どもの頃、最初に覺えた道真公の歌です。

遺された 文化引繼ぎ 今の世と 次の世代に それをつたへん

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このページは、宝徳 健が2014年3月 2日 07:13に書いたブログ記事です。

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