百人一首 五十六

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あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな

 史上最大の戀(恋)多き女 和泉式部の歌です。
 和泉式部の男性遍歴の派手さは並ではありません。時の最高権力者 藤原道長をして「浮かれおんな」と評したほどです。

 和泉式部は夫と子供がある身で、冷泉天皇の第三皇子爲尊親王とできてしまひます。若き親王と年上人妻女性のスキャンダルに、宮廷では衝撃が走りました。面子を台無しにされた夫は、彼女を離縁します。父からも感動されます。爲尊親王は二年後に亡くなりました。

 でも、和泉式部はめげません。今度は爲尊親王の弟 敦道親王とくっつきます。

 そんな和泉式部も病気になります。この歌は、病気が重くなり、死を豫感したころ、病床から戀人(恋人)に贈つたものと云はれてゐます。

「私はもうながくなさそふです。あの世に行く思い出に、せめてもう一度だけでいいから、あなたと愛し合いたい」

 う~ん、こんな歌をもらつたら、私なら病院に飛んでいきます。

 「あらざらむ」は「ないだらう」「この世のほか」は「この世と違ふ場所」です。つまり「この世では生きていけないだらう」となります。

 歌としても一流ですね。ぢやうずなんですよね~。

黒髪の みだれも知らず うちふせば まづかきやりし 人ぞこひしき
(黒髪が乱れているのにも気づかず伏していると、そつとあなたが私の髪をかきなでてくださつたことが戀しく思はれます)

 うまい歌だなあ。

 戀とは、人間を覺醒させるものなのですね。もう一度してみたい。

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このページは、宝徳 健が2014年5月23日 06:58に書いたブログ記事です。

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