百人一首 七十四

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うかりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 禱らぬものを

 源俊賴朝臣(みなもとのとしよりあそん)の歌です。

「私につれなかつた人がなびくやうにと初瀬の觀音樣に禱つたのに。初瀬の山おろしよ、もつとつれなくなれとは禱らなかつたのに」

 この歌のタイトルは「禱(祈)れども逢はざる戀(恋)」です。
 とても斬新な歌です。戀の歌が多い百人一首ですが、神仏に禱つてもかなはぬ戀とは・・・。

 長谷寺の觀音樣によせて獨創的な歌を詠みあげてゐます。

 初瀬とは奈良県櫻井市の地名です。古くは「はつせ」と呼ばれてゐました。そこにある長谷寺は、私が大好きな寺のひとつです。戀の願掛けで名高く、平安時代の女性も戀の成就にと熱心に通ひました。

 長谷寺の地形がもたらす冷たく厳しい山おろしを「うかける」と詠んでゐます。意味は「冷たくあたる」、つまり、つれなひといことです。

 戀の歌なのに、初瀬の山おろしに例へるなど、天才ですね。

 いつになつたらかういふ歌を詠めるのだらうか。

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このページは、宝徳 健が2014年7月 6日 07:42に書いたブログ記事です。

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