三島や谷崎を讀むと、今の小説が讀めなくなります。それほどのレベルの違ひを感じます。
あんな事件があつたので、三島由紀夫は「文學」という觀點からは(一般レベルで)正當な評価がされてゐないやうな氣がします。
つづきです。
あんな事件があつたので、三島由紀夫は「文學」という觀點からは(一般レベルで)正當な評価がされてゐないやうな氣がします。
つづきです。
體(体)も弱く、駈足をしても鐵棒をやつても人に負ける上に、生來の吃りが、ますます私を引込思案にした。そしてみんなが、私をお寺の子だと知つてゐた。惡童たちは、吃りの坊主が吃りながらお經を讀む眞似をしてからかつた。公団の中に、吃りの岡つ引の出てくるのがあつて、さういふところをわざと聲を出して、私に讀んできかせたりした。
吃りは、いふまでもなく、私と外界のあひだに一つの障碍を置いた。最初の音がうまく出ない。その最初の音が、私との内界と外界との間の扉の鍵のやうなものであるのに、鍵がうまくあいたためしがない。
一般の人は、自由に言葉をあやつることによつて、内界と外界との間の戸をあけつぱなしにして、風とほしをよくしておくことができるのに、私にはそれがどうしてもできない。鍵が錆ついてしまつてゐるのである。
吃りは、いふまでもなく、私と外界のあひだに一つの障碍を置いた。最初の音がうまく出ない。その最初の音が、私との内界と外界との間の扉の鍵のやうなものであるのに、鍵がうまくあいたためしがない。
一般の人は、自由に言葉をあやつることによつて、内界と外界との間の戸をあけつぱなしにして、風とほしをよくしておくことができるのに、私にはそれがどうしてもできない。鍵が錆ついてしまつてゐるのである。
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