百人一首 七十九

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秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけき

 左京大夫顕輔(さきょうだいぶあきすけ)の歌です。
 万葉集の時代は、雲一つかからない、さえざえとして満月の光が好まれました。雲がたなびいて月を隱さないでほしいと詠んだ歌が多く殘されてゐます。

 ところが平安朝になると、表現に對する美意識が變化します。月にかかる雲や、雲の途切れた間から差し込む月の光にも美しさを見出すやうになります。「源氏物語」の橋姫の巻に「雲隱れたりつる月のにはかにいと明かく差し出でたれば・・」(雲に隱れていた月が急にとても明るく差出でたので・・・)といふ一節があります。

「秋風にたなびく雲の途切れた間から、もれ出る月の光の、なんと澄み切つて明るいことよh」

 せっかくの満月をおおい隱すやうにたなびく雲。しかし、次の瞬間に、その切れ間から透明感あふれる月の光がもれ差し込んできました。その月光の美しさはもちろん、まわりの雲の色が一刻一刻変化するのもまた趣があるものです。素敵な歌ですね。

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このページは、宝徳 健が2014年7月14日 05:18に書いたブログ記事です。

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