百人一首 八十

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ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれてけさは ものをこそ思へ

「永く愛するといふあなたの本心にもかかわらずにお別れした今朝は、黒髪が寝乱れてゐるやうに、私の心も乱れて、悩んでゐることです」

 待賢門院堀河(たいけんもんいんほりかわ)の歌です。

 非劇の天皇 崇徳院の母である待賢門院に仕へてゐました。でも、戀する乙女です。平安時代の戀愛とは。
 平安時代の結婚は「通い婚」です。ほとんどの男性は、女性の人柄や家柄をうわさによつて知ります。そして、男性が女性に和歌を戀文として贈ります。贈つた戀文は、當の本人に届けられる前に、親や周辺の女房たちの間で回し讀みされてチェックを受けなければなりません。選んだ紙や筆跡などから、男性は教養の髙さを見られてゐたのです。

 チェックを通つてからも女性の顔が見られるのはまだまだです。合格点をもらつてはじめて、自本人同士の和歌のやりとりが始まります。おたがいの合意があれば、夜、偲ぶよやうにして、男性が女性に會ひに行きます。三日続けて通へば夫婦と見なされます。電燈などない平安時代です。顔ははつきりとわからないまま・・・。

 お互いが顔を見られるのは「處顕(ところあらはし)」といふ披露宴の席です。

 女性は大變です。当時は男性は何人と結婚してもよかつたから、氣がぬけません。

 そんな思ひがこめられた歌ですね。

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このページは、宝徳 健が2014年7月15日 09:01に書いたブログ記事です。

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