三島由紀夫、谷崎純一郎・・・。いいですね~。
では、つづきです。
では、つづきです。
・・・・・このとき私に、たしかに一つの自覺が生じたのである。暗い世界に大手を広げて待つてゐること。やがては、五月の花も、制服も、意地惡な級友たちも、私のひろげてゐる手の中に入つてくること。自分が世界を、底邊で引きしぼつて、つかまへてゐるといふ自覺を持つこと。・・・・・しかしかういふ自覺は、少年の誇りとなるには重すぎた。
誇りはもつと輕く、明るく、よく目に見え、燦然としてゐなければならなかつた。目に見えるものがほしい。誰の目にも見えて、それが私の誇りとなるやうなものがほしい。例へば、彼の腰に吊つてゐる短劍はまさにさういふものだ。
中學生みんなが憧れてゐる短劍は、實に美しい装飾だつた。海兵の生徒はその短劍でこつそり鉛筆を削るなんぞ言はれてゐたが、さういふ荘嚴な象徴をわざと日常些末の用途に使ふとは、何とも伊達なことだらう。
誇りはもつと輕く、明るく、よく目に見え、燦然としてゐなければならなかつた。目に見えるものがほしい。誰の目にも見えて、それが私の誇りとなるやうなものがほしい。例へば、彼の腰に吊つてゐる短劍はまさにさういふものだ。
中學生みんなが憧れてゐる短劍は、實に美しい装飾だつた。海兵の生徒はその短劍でこつそり鉛筆を削るなんぞ言はれてゐたが、さういふ荘嚴な象徴をわざと日常些末の用途に使ふとは、何とも伊達なことだらう。
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