三島由紀夫の名作「金閣寺」を讀みながら、歴史的假名遣ひと正しい漢字を學んでゐます。つづきです。有爲子にいつたい何をしようとしてゐるのでせうか?
私は待つて、何をしようとしたのでもない。息をはずませて走つてきたのが、欅の木蔭に息を休めてみて、自分がこれから、何をしようとしてゐるのかわからなかつた。しかし私は、外界といふものとあまり無緣に暮らして來たために、ひとたびは外界へ飛び込めば、すべてが容易になり、可能になるやうな幻想があつた。
藪蚊が私の足を刺した。をちこちに雞鳴(けいめい)が起こつた。私は路上を透かし見た。遠く白い仄かなものが立つた。それは曉の色のやうに思はれたが、有爲子だつたのである。
有爲子は自轉車に乗つたらしかつた。自轉車は危ふく急停車をした。つづく
藪蚊が私の足を刺した。をちこちに雞鳴(けいめい)が起こつた。私は路上を透かし見た。遠く白い仄かなものが立つた。それは曉の色のやうに思はれたが、有爲子だつたのである。
有爲子は自轉車に乗つたらしかつた。自轉車は危ふく急停車をした。つづく
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