三島由紀夫の金閣寺のつづきです。
有爲子は言つたが、この聲いんは朝風に端正さと爽やかさがあつて。彼女はベルを鳴らし、ペダルにまた足をかけた。石をよけるやうに私を避けて迂回した。人影ひとつないのに、遠く田の向かうまで、走り去る有爲子が、たびたび嘲つて鳴らしてゐるベルの音を私は聞いた。
―その晩、有爲子の告げ口で、彼女の母が、私の叔父の家へやつて來た。私は日ごろは温和な叔父からひどく叱責された。私は有爲子を呪ひ、その死をねがふやうになり、數ケ月後には、この呪ひが成就した。爾來私は、人を呪ふといふことに確信を抱いてゐる。
―その晩、有爲子の告げ口で、彼女の母が、私の叔父の家へやつて來た。私は日ごろは温和な叔父からひどく叱責された。私は有爲子を呪ひ、その死をねがふやうになり、數ケ月後には、この呪ひが成就した。爾來私は、人を呪ふといふことに確信を抱いてゐる。
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