不朽の名作 三島由紀夫の金閣寺を讀みながら正しい日本語を學習してゐます。
寝ても覺めても、私は有爲子の死をねがつた。私の恥の立會人が、消え去つてくれることをねがつた。證人さへゐなかつたら、地上から恥は根絶されるであらう。たにんはみんな證人だ。それなのに、他人がゐなければ、恥といふものは生まれて來ない。私は有爲子のおもかげ、曉闇のなかで水のやうに光つて、私の口をじつと見つめてゐた。彼女の眼の背後に、他人の世界―つまり、われわれを決して一人にしておかず、進んでわれわれの共犯となり證人となる他人の世界―を見たのである。他人がみんな滅びなければならぬ。私が本當に太陽へ顔を向けられるためには、世界が滅びなければならぬ。・・・・・・・
例の告げ口の二ヶ月あと、有爲子は海軍病院をやめて、家に引きこもつた。村の人たちはいろいろ取沙汰した。さうして秋のをはりに、あの事件が起こつた。
例の告げ口の二ヶ月あと、有爲子は海軍病院をやめて、家に引きこもつた。村の人たちはいろいろ取沙汰した。さうして秋のをはりに、あの事件が起こつた。
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