來ぬ人を 松帆の浦に 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
権中納言定家(ごんちゅうなごんていか)の歌です。いよいよ百人一首の選者である藤原定家の登場です。女性になりきつて詠んでゐます。
松帆は、兵庫県明石市の對岸にある、淡路島の北端あたりです。藻塩とは、海藻から採取する塩のことです。この頃は、海藻に潮水をかけて天日干しにし、さらに焼いて水に溶かし、煮詰めて塩をとりだしてゐました。風のない夕暮に、海藻を焼く煙が、天に向かつてまつすぐ伸びてゐきます。その穩な風景の中にたたずむ女性の心中はおだやかではありません。
「夕暮れの松帆の浦で、いくら待つても來ないあなたを待つてゐると、浜で焼かれてゐる藻塩のやうに、じりじりと身の焦がれる思ひがするわ」
「まつ」に「松」と「待つ」を掛けてゐます。「こがれる」に藻塩の「焼けこがれる」と「戀こがれる」が掛けられてゐます。
こんな歌を詠めるやうになりたいものです。
「夕暮れの松帆の浦で、いくら待つても來ないあなたを待つてゐると、浜で焼かれてゐる藻塩のやうに、じりじりと身の焦がれる思ひがするわ」
「まつ」に「松」と「待つ」を掛けてゐます。「こがれる」に藻塩の「焼けこがれる」と「戀こがれる」が掛けられてゐます。
こんな歌を詠めるやうになりたいものです。
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