つづきです。ついに有爲子が・・・。
しかしそれから先の彼女は別人になつてしまふ。おそらく石段を登り切つた有爲子は、もう一度私を、われわれを裏切つたのだ。それから先の彼女は、世界を全的に拒みもしない。全的に受け容れもしない。ただの愛慾の秩序に身を屈し、一人の男のための女に身を落としてしまつた。
だから私は、それを古い石版刷にやうな光景としてしか思ひ出すことができぬ。・・・・・有爲子は渡殿を渡つて、御堂の闇へ呼びかけた。男の影があらはれた。有爲子は何か語りかけた。男は石段の途中に向けて、手にしてゐた拳銃を打つた。これに應戰する憲兵の拳銃が、石段の中途の繁みから發射された。男はもう一度拳銃を構へると、渡殿のはうへ逃げようとしてゐる有爲子の背中へ、何發かつづけて射つた。有爲子は倒れた。男は拳銃の銃先を、自分の顳かみに當てて發射した・・・。
だから私は、それを古い石版刷にやうな光景としてしか思ひ出すことができぬ。・・・・・有爲子は渡殿を渡つて、御堂の闇へ呼びかけた。男の影があらはれた。有爲子は何か語りかけた。男は石段の途中に向けて、手にしてゐた拳銃を打つた。これに應戰する憲兵の拳銃が、石段の中途の繁みから發射された。男はもう一度拳銃を構へると、渡殿のはうへ逃げようとしてゐる有爲子の背中へ、何發かつづけて射つた。有爲子は倒れた。男は拳銃の銃先を、自分の顳かみに當てて發射した・・・。
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