つづきです。
さて父は私を導いて、うやうやしく法水院の縁先に上つた。私はまづ硝子のケースに納められた巧緻な金閣の模型を見た。この模型は私の氣に入つた。このはうがむしろ、私の夢みてゐた金閣に近かつた。そして大きな金閣の内部にこんなそっくりそのままの小さな金閣が納まつてゐるさまは、大宇宙の中に小宇宙が存在するやうな、無限の照應を思はせた。はじめて私は夢みることができた。この模型よりもさらにさらに小さい、しかも可燃な金閣と、本物の金閣よりも無限に大きい、ほとんど世界を包むような金閣とを。
しかし私の足は、いつまでも模型の前に止つてゐたわけではない。次いで、父は名高い國寳の義満像の前へ私を案内した。その木造は義満の剃髪ののちの那、鹿苑院殿道義の像を呼ばれてゐる。
しかし私の足は、いつまでも模型の前に止つてゐたわけではない。次いで、父は名高い國寳の義満像の前へ私を案内した。その木造は義満の剃髪ののちの那、鹿苑院殿道義の像を呼ばれてゐる。
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