金閣寺(歴史的假名遣ひと正しい漢字)

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 つづきです。
 藥石と呼ばれる夕食をご馳走になり、その晩は泊めてもらふことになつたが、夕食後私は父を促して、もう一度金閣を見に行つた。月がのぼつたからである。

 父は住職との久々の對面に大そう疲れてゐたが、金閣と聞くと、息を切らしながら私の肩につかまつてついて來た。

 月は不動山の外れからのぼつた。金閣は裏側から月光をうけ、暗い複雑な影を折り畳んで靜まり、究竟頂の華頭窓の枠だけが、月の滑らかな影を辷(すべ)らせてゐた。究竟頂は吹き抜けなので、そこには仄かな月明かりが住んでゐたやうに思はれた。

 葦原島のかげから夜鳥が叫びをあげて飛び翔つた。私はわが肩に父の痩せ細つた手の重みを感じてゐた。その肩に目をやつたとき、月光の加減で、私は父の手が白骨に變はつてゐるのを見た。

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このページは、宝徳 健が2014年9月20日 02:49に書いたブログ記事です。

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