つづきです。
私は何の反發も感じないで、かう云はれると、自分が淋しく見えたといふ相手の感想から、或る安心と自由を贏(か)ち得て、言葉がすらりと出た。
「何も悲しいことあらへん」
鴨川はうるささうなほど長い睫を押しあげて、こちらを見た。
「へえ・・・それぢや君は、お父さんを憎んでゐたの?少なくとも、きらひだつたの?」
「おこつてなんいあゐへんし、きらひでもなし・・・」へえ、それでどうして悲しくないの?」
「何となくや」
「わからん」
鴨川は難問に逢著して、草の上に坐り直した。
「それなら、ほかにもつと悲しいことでもあつたのかな」
「何や、わからへん」
と私は言つた。
「何も悲しいことあらへん」
鴨川はうるささうなほど長い睫を押しあげて、こちらを見た。
「へえ・・・それぢや君は、お父さんを憎んでゐたの?少なくとも、きらひだつたの?」
「おこつてなんいあゐへんし、きらひでもなし・・・」へえ、それでどうして悲しくないの?」
「何となくや」
「わからん」
鴨川は難問に逢著して、草の上に坐り直した。
「それなら、ほかにもつと悲しいことでもあつたのかな」
「何や、わからへん」
と私は言つた。
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