つづきです。
言つてから、私は人に疑問を起こさせるのがどうして好きなのかと反省した。私自身にとつてはそれは疑問でも何でもない。自明の事柄である。私の感情にも、吃音があつたのだ。私の感情はいつも間に合はない。その結果、父の死といふ事件と、悲しみといふ感情とが、別々の孤立した、お互ひに結びつかず犯し合はないもののやうに思はれる。一寸した時間のずれ、一寸した遅れが、いつも私の感情と事件とをばらばらな、おそらくそれが本質的なばらばらな状態に引き戻してしまふ。私の悲しみといふものがあつたら、それはおそらく、何の事件にも動機にもかはりなく、突發的に理由もなく私を襲ふである。・・・・・
・・・・・又しても私は、かういふ凡てを、目前の新しい友人に説明できずに終はつた。鴨川はたうとう笑ひ出した。
「へえ、變つてるんだなあ」
・・・・・又しても私は、かういふ凡てを、目前の新しい友人に説明できずに終はつた。鴨川はたうとう笑ひ出した。
「へえ、變つてるんだなあ」
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