金閣寺

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 なんでせう。何の変哲もない事實が、三島由紀夫の手にかかるとこれほどの文章になつてしまひます。素晴らしい。

 つづきです。
 それまで、奇妙なことに思jはれようが、私は金閣と空襲とを結びつけて考へてみたことがなかつた。サイパンが陥ちてこのかた、本土空襲は免れないものとされ、京都市の一部にも強制疎開が急がれてゐたが、それでも金閣といふこの半ば永遠の存在と、空襲の災禍とは、私の中でそれぞれ無縁のものでしかなかつた。金剛不壊の金閣と、あの科學的な火とは、お互ひにその異質なことをよく知つてゐて、會へばするりと身をかはすやうな氣がしてゐた。・・・、やがて金閣は、空襲の火に燒き亡ぼされるかもしれぬ。このまま行けば、金閣が灰になることは確実なのだ。

 ・・・・・かういふ考へが、私の裡に生まれてから、金閣は再びその悲劇的な美しさを増した。

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このページは、宝徳 健が2014年10月23日 04:46に書いたブログ記事です。

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