金閣寺(歴史的假名遣ひと正しい漢字)

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 つづきです。
 私は今でもふしぎに思ふことがある。もともと私は暗黑の思想にとらはれてゐたのではなかつた。私の關心、私に與へられた難問は美だけである筈だつた。しかし戰爭が私に作用して、暗黑の思想を抱かせたなどと思ふまい。美といふことだけを思ひつめると、人間はこの世で最も暗黑な思想にしらずしらずぶつかるのである。人間は多分さういふ風に出來てゐるのである。

 戰爭末期の東京の、或る挿話が思ひ出される。。それはほとんど信じがたいことであるが、目撃者は私一人ではない。私の傍らには鶴川がゐたのである。

 電休日の一日、私は鶴川と一緒に南禪寺に行つた。まだ南禪寺を訪れたことがなかつた。私たちは紘ドライヴウエイを横切つて、インクラインに跨る木橋を渡つた。

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このページは、宝徳 健が2014年11月15日 13:39に書いたブログ記事です。

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