さすが三島由紀夫です。描寫が見事です。
信じがたいことが起こつたのはそのあとである。女は姿勢を正したまま、俄かに襟元をくつろげた。私の耳には硬い帶裏から引き抜かれる絹の音がほとんどきこえた。白いむねがあらはれた。私は息を呑んだ。女は白い豐な乳房の片方を、あらはに自分の手で引き出した。
士官は深い暗いいろの茶碗を捧げ持つて、女の前へ膝行した。女は乳房を兩手で揉むやうにした。
私はそれを見たとは云はないが、暗い茶碗の内側に泡立つてゐる鶯いろの茶の中へ、白いあたたかい乳がほとばしり、滴り殘して納まるさま、靜寂な茶のおもてがこの白い乳に濁つて泡立つさまを、眼前に見るやうにありありと感じたのである。
士官は深い暗いいろの茶碗を捧げ持つて、女の前へ膝行した。女は乳房を兩手で揉むやうにした。
私はそれを見たとは云はないが、暗い茶碗の内側に泡立つてゐる鶯いろの茶の中へ、白いあたたかい乳がほとばしり、滴り殘して納まるさま、靜寂な茶のおもてがこの白い乳に濁つて泡立つさまを、眼前に見るやうにありありと感じたのである。
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