どきどきしますね。つづきです。
四人にはせますぎる蚊帳の中で、父の隣に寢てゐた私は、寢返りを打つうちに、いつしか父を片隅に押しやつてゐたらしい。そこで私と私の見たものの間には、皺だらけの敷布の白い距離があり、私の背には、身を丸めて寢てゐる父の寢息が、衿元へぢかに當つてゐた。
父が目をさましてゐるのに氣づいたのは、咳を押し殺してゐる呼吸の不規則な躍り上がるやうな調子が、私の背に觸れたからである。そのとき、突如として、十三歳の私のみひらいた目は、大きな暖かいものにふさがれて、盲らになつた。すぐにわかつた。父のつたつの掌が、背後から伸びて來て、目隱しをしたのである。
父が目をさましてゐるのに氣づいたのは、咳を押し殺してゐる呼吸の不規則な躍り上がるやうな調子が、私の背に觸れたからである。そのとき、突如として、十三歳の私のみひらいた目は、大きな暖かいものにふさがれて、盲らになつた。すぐにわかつた。父のつたつの掌が、背後から伸びて來て、目隱しをしたのである。
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