凛として　五十四

第９章　本懐
「スコットランドでも３つのタイプの工場をつくった人はいないはず」
あふれる達成感、病床でもグラス離さず

　平成十三年（２００１）年、世界唯一のウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」主宰のウイスキー鑑定イベントで、ニッカウヰスキーの「シングルモルト余市１０年」が、一位に選ばれた。著名パネリストが、銘柄が隠されたままテイスティングし、その総合点で評価するものだ。

　「シングルカスク」とは一つの樽からそのままびん詰めしたものをいう。一箇所の蒸留所でつくられたモルトウイスイーを詰めたものは「シングルモルト」、複数の蒸留所でつくられたモルトウイスキーを混ぜ合わせたものは「ピュアモルト」と呼ぶ。

　ニッカウヰスキー社長、宇野正紘は「シングルかすくで評価されたこともうれしかった。近年、ブレンド技術は進化していて、複数の厳守を入れたピュアモルトも多いのですが、あえてシングルかすくを選んで鑑定に出したブレンダーもすごい。ニッカの誇りです」と胸を張る。