金盞香(皇紀弐千六百七十六年十一月十八日)

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 昨日から七十二候 立冬 末候 金盞香ですね。「きんせんかさく」と讀みます。

 水仙の花が咲きはじめる頃。漢字やよみからは、金盞花を連想してしまいそうですが、水仙の花のことを表しています。水仙は上品な香りと、育てやすさから人気のある花です。
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 水仙の花はなんともいへない美しさですね。凛として清楚で。

 住んだことはありませんが、私の本籍は、福井県丹生郡越前町玉川です。初めて行つたときは、「なんて田舎なんだ」と思ひました。そこで、祖先は北前船やつてゐたさうです。でも、祖父が小浜水産高校の學生の時代、二隻だか三隻だか同時に沈んで我が家の没落がはじまつたさうです。

 昔は寳德屋敷といはれらさうです。法要を一度越前町でやりました。一泊して、親戚全員で、歸へるためのバスを待つてゐました。すると、まつたく知らない高齢のご婦人が、「あんたたち、寳德やらう」と。

 なんでわかるんだらう?と思つて不思議な顔をしてゐたら、「あんたらち、寳德の顔や」と。

 へー、名士だつたのですね(笑)。
 
 越前町は水仙で有名です。

 水仙は、支那の古典で「仙人は天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」といふことから名づけられたとか。

 ギリシャ神話にもあります。
美貌の少年ナルキッソスはたくさんの女性たちに想ひを寄せられますが、女性にまつたくなびかずにいつも冷淡な態度をとつてゐました。ナルキッソスに想ひを寄せたアメイニアスという女性は、ナルキッソスに冷たくあしらはれて絶望し、自ら命を絶つてしまひました。また、森の妖精であつたエーコーもナルキッソスに戀をしますが、相手にされませんでした。悲しみと屈辱のあまり、エーコーはやせ衰えて声だけの存在になつてしまひます。

 エコーですね。

 これを知った女神メネシスは激怒し、ナルキッソスに自分だけしか愛せない呪ひをかけます。彼は水鏡に映つた自分の姿に戀をして、水を飲むことも忘れ、やがてやせ細つて死んでしまいひました。彼のいたところに咲いたのが水仙の花です。


 ナルシストです。


  さうだ、こんなのも。

 黄色い水仙には「まう一度愛してほしい」「私のもとへ歸つて」などの花言葉があります。黄水仙にもギリシャ神話のエピソードが言い伝えられています。

 冥界の王ハーデスは女神アフロディーテ(ローマ神話のビーナス)の策により、息子のエロス(ローマ神話のキューピッド)に戀の矢を打たれて、デメテルの娘ペルセポネに戀をします。野で花を摘んでいたペルセポネはハーデスにさらはれ、冥界に連れ去られてしまひます。この時、ペルセポネの手から落ちた水仙が黄水仙に變わつたたと言はれてゐます。ペルセポネの母であったデメテルは激怒し、ゼウスに抗議します。でも、ゼウスはこれをはねつけてしまひ、デメテルは姿を隠してしまひます。冥界に連れ去られ得たペルセポネは、その後もハーデスのアプローチに應じることがなかつたさうです。

 まだまだたくさん。古代から世界で愛された花なのですね。

ハーデスも ナルキッソスにも 愛された 水の仙人 いまでもここに


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このページは、宝徳 健が2016年11月18日 01:11に書いたブログ記事です。

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