しかし出会って、いくどかお話しをうかがうにしたがって、意を強くしました。「この人は、石油業界唯一の真実だ」と。
ですから、出光佐三氏も、石油業界唯一の真実だったとは思いますが、出会いを通してということにしてください。
私は昭和58年に、この業界に入りました。出光佐三氏が、「諸悪の根源」と表現した石油業法をはじめとした、旧通産省(現在の経済産業省)の悪政 である、様々な規制が業界に従事している人から、経営の意思決定を奪い、非常に情けない経営をみんながしていました。入ったばかりの私は、出光の仕事その ものの楽しさ(当時この会社はすごかった)は感じていましたが、業界そのものには、純粋に疑問を感じていました。
SSは一つつぶさないと新しいものをつくれない。売る量だけのガソリンをつくれない。などなど、あげたらきりがありません。そのかわり、暗黙の了 解として、めったなことでは、つぶれないという、経営にとっては最大のリスク回避メリットを享受していました。また、マーク替えと称して、ある元売マーク から別の元売マークに変えると、受け手の元売から莫大な資金が出ていました。正当な市場競争による業界の発展を、業界関係者のほとんどすべてが放棄してい るような状態でした。甘えの構図そのものです。
もっと、卑近な例で申し上げると、SSには、大きくわけて現金で購入されるお客様と掛で購入されるお客様がありますが、従来のSSは、他業界では考えられない、現金高の掛安でした。それを、宇佐美のおやじが、当然のごとく現金安の掛高で 販売しました。そうすると、業界全体から「宇佐美安売り」の大バッシングがおきました。正しいことが通用しないひんまがった業界でした。今でも、一部の地 域では、現金高の掛安です。掛の価格を維持したいので、現金価格をわざと高めに誘導しています。
言語に絶するいじめだったようですが、おやじは貫き通しました。
価格だけではなく、経営の内容も日本にキャッシュフロー経営の概念が導入される以前から、(理屈ではわかっていないけれど)キャッシュフロー経営 でした。その他、経営の仕組みが非常にシンプルで、なおかつ、事業・人・客を愛する姿勢。業界に入ってはじめてすがすがしい気持ちを覚えたことが昨日のこ とのようです。
正しいことを行うと、経営は強くなります。その強さが気に入らない業界人が、氏が怪我をしたときに喜んだ人たちです。
誰が正しいかではなく、何が正しいか。この経営の原点を追求していく時代に来ています。こんなシンプルなことが、とても難しい。それを貫いた氏に あらためて敬意を表します。
今日は少し硬い話になりましたね。明日からまた親父の非まじめを書きます。
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