どの本よりわかりやすい南総里見八犬伝 再21(皇紀弐千六百七十七年六月十日 弐)

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 番作がついに村雨丸を隠しているところから出しました。信乃に渡します
 番作がうやうやしく鞘(さや)を額に当ててしばらく念じて抜き放てば、煌々と光り輝く村雨丸。しばらくして番作は鞘に納めました。

「信乃、この刀の奇跡を知っておるか。心に殺気を含んで抜き放てば、切っ先から梅雨が滴り落ち、敵を切って刃に血がつけば、その水ますますほとばしって、拳にまで伝わり流れる。それは村雨(むらさめ)が、こずえに降って木の幹を流れ落ちるに似ているので、村雨と名づけられたのだ。これをそなたに授けよう。しかし、その女姿ではまずい。今から男に戻るとよい。本当は十六の春を待とうと思ったが、わしは病気に苦しめられてもう長くはない。そなたを残すことだけが心残りじゃ」

「何を申されます、父上。まだ五十にもならないではありませんか。もしや、御教書(みぎょうしょ)の件で召し取られるようなことになったとき、私一人を逃がす所存ではございませんか?」

「はっはっは~、御教書の件は作り話じゃ。わしがこの場で死んだら、姉夫婦は大塚家を横領したなどと噂されいたたまれなくなるから、おぬしを引き取らざるをえないだろう。そうすることで、おぬしの生活は大丈夫だ。さらば、信乃」

 と言って、番作はふたたび村雨丸を抜き放ちます。信乃は必死に番作の右手にすがりついて止めさせようとしますが、病身の体のどこから出てくるのかと思われるぐらいの力で番作は信乃を突き放し、腰をすえ、悠然と腹をかききったのです。

 さあ、どうなるのでしょうか。続く。

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このページは、宝徳 健が2017年6月10日 05:03に書いたブログ記事です。

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