どの本よりわかりやすい南総里見八犬伝　再４３（皇紀弐千六百七十七年八月二十二日　四）

　背後でうかがっていた額蔵は村雨丸を取り戻して信乃の届けたいのは山々ですが、妹の申し出さえ拒んだ行者　犬山道節忠与が尋常な話し合いで譲るわけがないと考えます。組み伏してでも取り戻そうと考えます。

　犬山道節忠与の背後から「曲者待て」と額蔵が呼び止めます。二人は組討になりましたが、力が互角でいつ勝負がつくともわかりません。

道節「まてしばらく。貴様の腕はすごい。オレにはあだ討ちの大望がある。貴様と今ここで争いたくないのだ」

額蔵「俺の手並みがわかったら、村雨丸を渡してとっとと消えうせろ。俺は犬塚信乃の無二の親友、犬川荘助義任(よしとう）だ」

道節「大望をとげるまでは、妹にも渡さなかった太刀を貴様ごときに渡すか」

額蔵「いや、取らずにおくものか」

　道節は、隙を見て火の穴に飛び込み姿を消してしまいました。額蔵は見回しましたが何も見えません。

額蔵「さては火遁の術で逃げおせたか。残念だ。それにしても、斬りあっている最中に道節の傷口から飛び出し、俺の手の中に飛び込んだものはいったいなんだ」
　
　と飛び込んできたものを火に照らしてよくみてみると、自分や信乃が持っている孝・義の玉と寸分違わぬ「忠」の一字のある玉ではありませんか。

額蔵「あの犬山道節もわれわれの同志に違いない」と驚き、しかたがなく大塚村に急ぎました。

　さて、大塚村で、蟇六と亀篠はどうなっているのでしょうか。つづく。