戰國策 再51(皇紀弐千六百七十七年十二月十八日 五)

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 今回も斉の孟嘗君(もうしょうくん)の話です。タイトルは「味なはからい」です。

 孟嘗君の食客に、孟嘗君の妾と密通している者がいました。これを知った、食客の一人が、孟嘗君に言いました。「食客ふぜいで、ご主君の女と密通するとはもってのほか。即刻お手打ちなさるべきかと思います」
 孟嘗君は答えました。
「まあよいではないか。美しい女に魅かれるのは人の情けというものだろう。捨ておけ、捨ておけ」

 こうして一年が経ちました。孟嘗君は、自分の妾と密通している食客を呼びました。
「せっかくわたしのもとにおいでになったのに、いまだによい地位をつけてさしあげることができず、まことに申し訳なく思っています。さればとて、そのへんの小役人ぐらいでは、あなたも満足できないでしょう。ところで私は衛君とは親密な間柄です。いかがでしょう、これから、馬車・支度金を用意させますから、衛君のところに行って仕えてみる気はありませんか」
 
 食客は衛君のもとに行き、重用されるようになりました。

 その後のこと、斉・衛の関係が断絶し、衛君は他の諸国と語らって斉に攻撃をかけようとしました。このとき、くだんの食客が、こう言って衛君を諌めました。
「わたしがこうしてあなたに仕えているのは、孟嘗君が、つまらぬこの私を、あえて推薦してくださったからにほかなりません。とことで、斉・衛のご先君は、互いに馬・羊の血をすすり『斉・衛両国は子々孫々に至るまで矛を交えまい。もし、矛を交えることあらば、死をもって報われるであろう』と誓い合ったということです。しかるにあなたは今、諸国と語らって斉に攻撃をしかけようとしております。これは、ご先君の盟約にも反し、かつ、孟嘗君との友情を裏切ることでもあります。なにとぞ、斉を討つことはおやめください。さもないと、今ここでおいの知を頂戴すかまつり、死出のお供をいたす覚悟でございます。」

 斉の人々はこの知らせを聞いて、こう語り合いました。

「孟嘗君は味なはからいをしたものだ。禍転じて功とした」

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このページは、宝徳 健が2017年12月17日 17:28に書いたブログ記事です。

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